学校給食ではなじみの「牛乳」。それだけに、多くの日本人が牛乳を飲み出したのは戦後の学校給食実施以降といってよいが、実は、日本人が最初に牛乳を飲んだとされる例はかなり古い。本書によると、七世紀半ば、孝徳天皇に帰化人の善那が献上したのが最初とされている。
本書は十年前に出た『牛乳と日本人』に、最新データーや学校給食の部分を付け加えた新版で、長く乳業会社に勤めた著者が、牛乳文化史を研究した成果をまとめたものだ。日本の食文化史について牛乳を素材に学習するときの格好の参考資料となろう。総合的な学習の時間などで食文化をテーマにするときに、その素材の一つとして取り上げたいものだ。
「木簡は歴史の証人」「信長・家康・武蔵」などの項を読むと、飛鳥の時代から、酪・蘇(濃縮した牛乳)・醍醐(バターオイル)などの乳製品が登場している。ただ、鎌倉期末期には酪農もなくなっり、仏教での禁止もあって乳製品の歴史は明治期に至るまで空白期ができてしまう。ただ、著者はまったくすたれてしまったのではなく、朝廷やそれに関連する集団内で滋薬として続いていたのではないか、と推論している。そうでないと、徳川時代などに大名がときどき牛乳を薬として飲んでいたこのと説明がつかないからだ。
学校給食以降の牛乳については、身近であっても、飛鳥時代からの牛乳の歴史を振り返ってみると、食文化史が人間の歴史の中で果たしてきた役割の重要性に気づかされる。
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