写真集、社会、生活、新宿
新宿海溝
The Shinjuku Trench
平賀淳 写真
B5判/96頁/並製
3800円(本体価格・税別)
ISBN4-88008-315-1 C0072
ここは熱帯魚が棲む水槽、あるいは海の底のような街だ。

……赤く、そして青く彩られた電飾の光を浴びながら、それを眺めているだけで、人は街そのものになってゆく。新宿通りから靖国通りへ、そして川を渡るように歌舞伎町の入り口へと歩く数分の間に、誰もがきっと変身させられて、光の河のその底を泳ぐ魚になっているにちがいない。コマ劇場まえの噴水が、かつての住みかのように懐かしく感じられる。

ここは熱帯魚が棲む水槽、あるいは海の底のような街だ。

瀬戸正人〈街の底〉より


……繁華街のビルの谷間を歩いていると、何か得体の知れぬ闇を感じることがある。しかし、そこは忌避すべき場所というよりは、むしろ心惹かれる場所である。おそらくその変幻から「死」を予感させると同時に、「生の断片」といえるものが見られるからであろう。(…中略…)ここで言う「新宿」とは限定された地名というよりは繁華街の象徴としてのイメージである。どこの街にもある「海溝」はおそらくどこかで繋がっていて、最後には一番深い場所「新宿」に流れ着くと言っても良かろう。

平賀淳〈あとがき〉より
  在庫/有り