そしてぶらぶら猫は行く
パリ再訪雑記

[2003/07/17]

パリの空はあくまで青く…

 ぶらぶら猫の1か月のパリ滞在も終わりに近づいた。滞在半ばの7月初めからはじめたこのコラムもこれで終わりである。新宿書房社長からせっかくだからパリ便りを書かないか、できれば一日一コラムを目標として欲しいと言われ、それは難しいにしても二日に一コラムくらいはできるのではと思ってはじめ、結果として、なんとか一日一コラムのペースを達成できた。

 書きはじめるとあれこれと書きたいことが次々と出てきた。最終的にとりあげなかったが、コルシカ島をめぐる問題やフランスの自動車事情、マクドナルド破壊の英雄ジョゼ・ボヴェの逮捕と周囲の動きや、黒船Iモードが上陸したフランスの携帯電話事情など、書きたいことはまだまだあるが、「現地発」が売りのコラムなので、とりあえずこれで終わりとしよう。

 それにしても違う文化の国を覗くというのは本当に楽しい。ただニュースを聞き、新聞を眺め、道行く人々を眺めているだけで、毎日毎日、新鮮な驚きと発見がある。日本では当たり前のことが当たり前ではなく、逆に、日本では異常なことがこちらでは日常だったりする。中には「素晴らしい、日本でも見習いたい」と思う優れた点もあれば、「一体何なんだ。まったくこれだからフランス人は」と思いたくなるおかしな点もある。グローバリゼーションによって世界のあらゆるものが均一化しつつあるが、まだまだ世界は多様であるし、また多様であって欲しいと思う。

 毎日晴天続きで暑い中を、それにしてもよく歩いた。この秋刊行予定の『パリ半日散歩(仮題)』の取材のためだが、これだけ集中して歩きまわったことはなかったように思う。一足早く真夏を経験したようなもので、パリに着いて数日で随分と日焼けした。

 また、今回のパリ滞在では短期間にこれまでなかったぐらいいろいろな人と出会った。これからパリに絵画留学に来る男性、ぶらぶら猫と同郷の在仏北海道県人会「ポプラ会」の事務局長さん、出版社パリグラムの人たち、パリ郊外にアトリエを構えるアメリカ人画家、そしてデパート「ボン・マルシェ」の片言の日本語を話すソムリエさん。

 なかでも道産子たちが口をそろえて「パリや郊外の風景は北海道そっくりだね。なつかしい」と言うのが印象に残った。なだらかな丘にポプラの生える風景。「内地」の人間にはわからない郷愁を、日本をはるか離れたこの地で道産子は感じるのだ。ひょっとして津軽海峡はユーラシア大陸よりも広い!?

 そしてこの青空。晴天続きだったこともあって、パリの青空をじっくり眺める機会が多かった。その度に「それにしても青いな~」と感じ入ったものだった。これまた北海道の空にも似ているのであるが、本当にのびのびと空を感じさせる、抜けるような青さなのだ。コラム第1回でパリの空から書きはじめ、最終回をまた空で締めくくる。今回一番印象に残ったのがこの青空だったかもしれない。「いやあ、本当に青くてきれいなんですよ、パリの青空は」。




*筆者 藤野優哉(ふじの・ゆうや):元編集者。1999年より1年間、絵描きを目ざしてパリに留学。3月に新宿書房より『ぶらぶら猫のパリ散歩──都市としてのパリの魅力研究』刊行。2003年6月17日~7月17日にかけて再びパリに滞在。

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