間道(かんどう)
[美術手帖 2009年1月号]
 
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[日本経済新聞 2007年3月18日]
 
[サンデー毎日 2006年11月05日号]
(本書は)3年に及ぶ見世物小屋の旅。のちに飴細工師となってからも旅は続く。坂入尚文著『間道(かんどう) 見世物とテキヤの領域』(新宿書房/税込2,520円)は、異世界に引き込まれるような本。
 芸大彫刻科を中退した著者は70年代後半、30歳の頃に大学の先輩から声をかけられる。その人は蝋人形の工房をもち、各地の見世物小屋で興行していた。その旅に加わり、トラックで北海道へ。各地の公園や広場に立つ高市(たかまち)には露店が並び、サーカスなど見世物をやる人が全国から集まる。
 稼ぎのあるとき、ないとき、地元の銭湯や飲み屋でくつろぐとき、忘れることのできない人々との出会い……。これらはやがては消えてゆくのだろうか。蝋人形館の旅も、著者が行かなくなってから2年ほどで興行をやめたという。
 その後、著者は飴細工をやるテキヤ(香具師)となり、芸大にいた縁で、94年にパリで行われた日本の「縁日」を再現するイベントにもかかわった。(阿武秀子)
 
[ツインアーク(東京商工会議所) 2006年11月号]
 
[ニッポン放送 2006年9月9日「塚越孝のおはよう有楽町」]
ニッポン放送 
9月 9日(5時〜7時)放送
『塚越孝のおはよう有楽町』

「本屋は最高!」Bookstore is the best!

『間道 見せ物とテキヤの領域』坂入尚文著/新宿書房刊)

先日、NHKで「渥美清の肖像」という
ドキュメンタリーをやってましたが、素晴らしかったですね。
渥美さんには、実際にテキ屋をやってた時代もありました。
だから、あの怖いほど見事な啖呵バイが出来るんですね。

今日、紹介する「間道」。
「間道」とは、わき道、抜け道、隠れ道…、
「裏街道」という意味なんですが、
書いた坂入尚文さんは、東京芸大の彫刻科の中退。
“官立”の学校に嫌気がさして、先輩とやめちゃったんですね。
この先輩も、日大の獣医学部から東京芸大に移ってきて、
やっぱり“官立”が嫌でやめてしまった人。
以来、蝋人形などを作ってるうちに、見世物小屋に入っちゃう。
旅また旅で、今度はテキヤになっちゃうという凄い人生。
寅さんと同じように、桜を追ったり、季節のいいところを旅する
テキヤさんの素晴らしさが文章に表れていて引き込まれます。

何と言っても口上がいい!
“海を越え山を越えてやって参りました
世界でただひとつの移動蝋人形館、
中にいるのはマリリン・モンロー、ピンク・レディー、
山口百恵、石野真子、アグネス・チャン、松田聖子、李礼仙、
郷ひろみ、西郷輝彦、堺正章、大橋巨泉、青島幸男など芸能人のほかに、
野坂昭如、小沢昭一、永六輔など文化人、
そして歴史上の人物などせいぞろい。御家族全員でお楽しみください”
てなことを言うんですね。

加えて、普通に芸術の道へ進み、ヨーロッパに行った芸大の先輩との、
天皇制にまつわる論争もやってます。
彼はテキヤの坂入さんが、天皇制についてどう捉えているか、
追究してくるわけなんですね。

パリの縁日、見本市のプロデュースも手がけたという
坂入尚文さんの「間道」。
こういう本に出会えるから「本屋は最高」。

<著者について>
坂入尚文(さかいり・ひさふみ)
1947年生まれ。東京芸術大学彫刻科中退。
飴細工師。見世物学会総務局長。
著作にエッセイ「仮設の間道」「横道の迷宮」など。
 
[図書新聞 2006年9月9日]
 
[ザ・クインテッセンス 2006年9月号]
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[北海道新聞 2006年8月20日]
 
[出版ニュース 2006年8月下旬]
 
[産経新聞 2006年8月20日]
 
[『反近代の逆襲?−生人形と江戸の欲望』(2006年6月、熊本市現代美術館)]
生人形と江戸の欲望─死の横に立つ異能者たち

南嶌 宏 熊本市現代美術館長

見世物とは芸を見せるのではない。火を吐くこと、血を見せること、蛇を見せること、禁忌を客に感じさせることだと思っている。
坂入尚文『間道─見世物とテキヤの領域』より

 この展覧会のカタログ原稿校了の直前、飴細工師の坂入尚文氏の友人でもある、私の古い仲間から、坂入氏のまだ書店にも並ぶ前の最近著が届いた。その名も『間道』(新宿書房刊)。「間」の「道」と書いて「かんどう」と読む。副題には「見世物とテキヤの領域」。私は私の原稿の校了をまだかまだかと待つ凸版印刷の木村氏に申し訳ないと心の中で謝りながら、一気にその「闘争記」を読み上げることになった(木村さん、ごめんなさい)。
 坂入尚文氏は東京芸術大学の彫刻科を中退し、その後、ふとしたきっかけから見世物小屋の座員として働くことになり、その後、作品制作を続けながら、農業に従事し、今度は飴細工の香具師となって、フーテンの寅さんよろしく、花を追い、月を追い、全国の高市(縁日などの露店の並ぶ祭り)を歩きながら、幸せを届け続ける、私にとっては「飴細工アーティスト」と記憶されていた人なのだが、謙遜の表れに、「いやいや、私は飴屋ですよ」というに違いない、坂入氏の半生を綴ったその一冊は、そのタイトルにすべてが語られているように、宇宙の光と影の、まさにその深き影の中からの、権威に対する異議申し立ての書物として、私の心を突き刺すことになった。切ないのだ。無性に切ないのだ。しかし、どこか死の臭いを感じさせ、その死の臭いゆえの切実な生の発露としての愛に満ちているとでもいえばいいのだろうか。それは万人に先験的な懐かしささえ感じさせるに違いない、人生の旅日記だったのである。
 巻末の解説によると、「間道」とは「わき道、抜け道、隠れ道、裏街道。地図にない間道はずっと昔からあった。ここを三寸ひとつで商売するコロビが祭りが終わるやいなや、ネタバレを恐れて夜を走る。見世物屋も馬賊もサンカもそして忍者も獅子舞も、この見えない間道をひたすら通り抜ける」とある。その「間道」と「間道」を繋ぐ、野間宏氏や沖浦和光氏いうところの「悪所」、つまり、貴賎を超越した人間解放の聖なるトポスからトポスへの旅は、死を友とする異能者たちとの旅であり、それはまさしくかつての生人形の巡業の道として、私の中で嬉しい重なりを見せた。そして、なによりも「あとがき」に小さく綴られた、「見世物は底抜けの芸や見る人の胸ぐらを掴むような演出を見せて消えていく。その人たちと会えたことは私のささやかな勝利だ」という言葉の中の、図らずも「ささやかな勝利」という文言に湛えられた確信こそ、揺るぎない坂入氏の人生の勝利の証であるとともに、締め切りぎりぎりに、この福音のような書物が届けられたことに、私は深い感慨を抱くことになったのである。



『反近代の逆襲?─生人形と江戸の欲望』
編集:南嶌宏、本田代志子(熊本市現代美術館)
発行:熊本市現代美術館
発行日:2006年6月24日
 
[『インパクション』153号]
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[『望星』9月号]
■『間道 ─見世物とテキヤの領域』
坂入尚文著
新宿書房 二四〇〇円
 芸大中退後、見世物小屋や農業など数々の遍歴の末、香具師の世界に身を投じて、飴細工師となった著者の半生記。テッカリ(裸電球)に照らし出される日常と非日常の世界。祭りの周縁にいる異能者を追う、飴細工師の終わりなき長い旅は続く。
 
[『PLAYBOY』 2006年9月号]
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[『東京かわら版』 2006年8月号]
 
[週刊読書人 2006年7月28日]
[週刊読書人 7月28日 アンケート2006年上半期の収穫から]
 
[中國新聞 7月9日、京都新聞 7月16日、静岡新聞 7月16日、神戸新聞 7月23日、新潟日報 7月30日、山形新聞 8月13日]
 
[高知新聞 2006年7月9日]
 
[あいだ 126号(2006年6月20日)]
「間道」とは「抜け道」のこと
 ▲本誌87号(2003年3月発行)に「血と死の諧謔─見世物断片記」を寄せた坂入尚文氏が、東京芸大彫刻科を中退してから飴細工師を生業とする香具師(テキヤ)となるまでの半生を、その間の周辺のさまざまな人びとの出会いをつうじて活写する初の著書『間道』(新宿書房、2400円)を出した。

 ▲あえて比較的美術に近い挿話を拾えば、1994年、氏が無謀にも(?)パリに日本の縁日をそっくりもちこむという企画を立ち上げ、「縁日風景'94─PARIS」として成功させるまでのくだりがおもしろい。「公的助成金」を得るためには、まず「企画書」を準備しなければならないのだが、そういう手続きさえ、氏には勝手わからぬ初体験だった。

 ▲で、〈やぐらに飾られた黄色の提灯には、有名人無名人、大企業、小企業、横町の飲み屋が名を連ねている。紅白幕が風を孕む。アジアの原色が連なる〉〈会場のあちこちでは、「しゃぼん玉道化師」、「居合い抜刀術」、「南京玉すだれ」、「大道舞踏」、「津軽三味線」、「江戸紙切」のパフォーマンスがいくつもの人の輪を作っている。ニューヨークタイムズで、鬼の踊りと評された赤ふんどしのギリヤークさんは、異文化故か、異相故か、多くの人びとに握手を求められていた。……〉。

 ▲これが、なんと、事後の「東京都への報告」の一部だというからケッサク。まったくもって公式文書らしからぬ文体に、お役人は目を白黒させたあと、ついわれを忘れて読みふけったにちがいない。
 
[朝日新聞 2006年7月2日]
 
[東京新聞、中日新聞 2006年6月25日/西日本新聞 2006年7月2日]
 
[週刊ポスト 2006年6月30日号]
本の詳細を見る→<ISBN4-88008-353-4