私たちはこうして二十世紀を越えた
[沖縄タイムス 3月27日]
[週刊読書人 2003年12月19日号]
40人アンケート 2003年の収穫「印象に残った本〈全120冊〉」
秋山駿(作家・文芸評論家)
(前略)
坂手洋二『私たちはこうして二十世紀を越えた』(新宿書房)。1966−2003年にわたる、一人の人間の思考と感覚が映し出された、日本の姿の記録である。視力が直線的で強い。私も犯罪の領域で、こんなことをしたいと昔は思った。

[せりふの時代 2003年秋号 小学館]

 21世紀に生きる者として、現在を執拗(しつよう)に克明に刻みつづけているのが、坂手洋二の『私たちはこうして二十世紀を越えた』だ。ニューヨークの日本語新聞で、1996年から連載しているコラム172本を一挙に収録したエッセイ集。
 税金問題や子供の自殺、国歌と天皇制、オウム法、はたまた酒鬼薔薇(さかきばら)事件や流行歌への考察など、世紀をまたいだ日本社会に起きたさまざまな事件、風俗、政治問題など、幅広い視野と問題意識を持って、ラディカルに読み解き、重い批判を突きつけてくる。演劇論や劇界の状況についての話題をなるたけ避けて語るのにも、著者一流の見識が感じられると同時に、こうしてあらためてまとめられてみると、今さらながらこの数年間の日本の歩んできた道のりの、大きなパースペクティブが、そのゆがみをも含めて、ありありと見えてくる気がする。(岡野宏文)

[東京新聞・中日新聞 2003年9月29日]

[劇の宇宙 2003年秋号、第14号(財)大阪都市協会]

 ニューヨークの日本語新聞で、1996年から連載の継続しているコラム172本を一挙に収録したエッセイ集。演劇のことや劇界の出来事を避け、日本社会に起きた事件、現象、風俗などを取り上げて論評しているところが最大の特徴である。著者らしい、執拗さとラディカルな姿勢につらぬかれた論理展開で、税金問題や子供の自殺、国歌と天皇制、オウム法、はたまた酒鬼薔薇事件や流行歌への考察などまで、鋭く重い社会批判をこめた筆が進められていく。
 こうしてあらためてまとめられたものを読むと、今さらながらこの数年間の日本の歩んできた道のりの、大きなパースペクティブが、そのゆがみを含めて、ありありと見えてくる気がする。同時に、日本という国に対する著者の、ほとんど「むき出し」ともいえる向き合い方には目を見張るものがある。(岡野宏文)

[週刊金曜日 2003年8月29日 評者=新城和博(編集者)]

[朝日新聞 8月27日夕刊 「世界の鼓動」]

 社会派の劇作家として知られる坂手洋二さん(41)が、ラジカルな視点で日本社会を読み解いた時評集「私たちはこうして二十世紀を越えた」(新宿書房、3800円)を出版した。
 ニューヨークの邦人紙「OCS NEWS」に96年から2週間に1度連載しているコラムをまとめた。天皇制から、沖縄、自殺、そして最近のイラク戦争まで、172本が並ぶ。
 「改めて通読して、自分の考えの傾向が恥ずかしいほどよく分かった」と坂手さん。「劇作家としての創作の秘密をバラしてしまったかも」と苦笑いしている。(今村修)

[日本経済新聞 8月11日夕刊]

 気鋭の劇作家・演出家が一九九六年からニューヨークの日本語新聞に連載しているコラム百七十二本を収録。沖縄、天皇制、セクシャリティー、自衛隊、宗教など、演劇で果敢に取り組んできたテーマに鋭く切り込む。脈打つ反骨精神は昨今出合うのがまれなほどの強度だ。

[出版ニュース 8月下旬号]

 <自立した人間たろうとする者は、自分の営為を「時代のせいにしてはならないと思う。だが同時に><本人の理由や事情ではない「抑圧」を受け「自立を妨げられている者」が存在するならば、その人たちを救うためになんらかの動きを取らねばならない><それが「自立をめざす人間」の義務である>劇作家で演出家の著者が、ニューヨークのタウン誌『OCSNEWS』に連載した「日本の面影」と題したコラム(1996年〜2003年)をまとめたもの。
 オウム事件、天皇制、狂牛病、沖縄特措法、戦争の記憶、歴史教科書、少年犯罪、日の丸・君が代、ワールドカップ、自衛隊と防災、保守政治の混迷、携帯電話、臓器移植、テロと戦争、死刑制度、表現の自由、拉致問題など、この7年半の間で論議を呼んだ問題をはじめ、映画・演劇、日常風景まで「自立」を阻害する日本のあり様を、自身を観測するように相対化してみせる。
本の詳細を見る→<ISBN4-88008-289-9