若葉は萌えて
──山林労働者の日記
宇江敏勝 著
国際交流基金(The Japan Faundation)の『本 Japanese Book News』
(2003,Number 42)より

[季刊『銀花』2003年春 NO.133]

 造林するための地ごしらえに明け暮れた日々、汗と泥にまみれた危険な労働。山小屋の共同生活での食事や住居の様子。焼酎をやりながら交わされる山男たちとの話、家族、恋……。夜、皆が寝静まってから、蝋燭の明りで、大学ノートに書きつけた克明な記録である。「働いた 飲んだ 書いた」自分の墓碑銘をこう刻みたいという作者の「肉体労働即人生」が語られる。エッセー集のために書き改めた「深い静かな山で」「若葉萌えいづる山で」と書下ろしの「ヤー・チャイカ(わたしはカモメ)」の三作が収められる。

[出版ニュース2002年12月下旬号]

 熊野山中に生まれ、育ち、そこで働いてきた「山の作家」の半世紀におよぶ思索の集大成となる「宇江敏勝の本」第1期全6巻が完結したが、本書はこの6巻目になるもので、山の作業小屋での日々を綴る物語である。
 舞台となるのは奈良と和歌山県境に広がる果無山脈の造林現場や林道の工事現場で、時代は1960年代から70年代。著者の主な仕事は「地ごしらえ作業」とよばれる伐採後の山の整地などで、作業を終えれば飯場に戻って眠り、雨が降れば仕事を休むという繰り返しだが、そのなかでも著者は山桜やタラの芽に季節を感じ、粗末な机に向かって本を読むという生活を続けていた。乞食流浪して「山河微笑」と達観した俳人・山頭火に対し、山河(自然)は慟哭や微笑をふくめ、それらを超越した存在なのであり、いうならば「山河無情」であるとつぶやいたりもするが、本書はそのような人と山との暮らしの機微を描く作品である。

[現代林業2003年1月号]

 本書は、拡大造林が盛んな頃に、紀伊山地を舞台に地ごしらえや植林、林道建設に携わったときの日記である。
 著者は和歌山県在住の宇江敏勝さん。山小屋で蜜柑箱を机代わりに、石油ランプを明かりにして綴ったもので、もし自分の墓碑名を刻むとしたら「働いた 飲んだ 書いた」になるだろうが、「書いた」の文字だけはぐんと小さくせねばなるまい、とも述べている。
 本書は「宇江敏勝の本」第1期の6巻目になり、すでに『森をゆく旅』『炭焼日記』『山びとの動物誌』『山に棲むなり』『樹木と生きる』が発行されている。

本の詳細を見る→ <ISBN4-88008-237-6

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