だれでも訪れることが出来る現在とは違い、厳しい鎖国政策を敷いていた時代のチベットに、文字通り命を賭してこの国を目指した十人の若者たちがいた。
それぞれの目的は、仏教の原典を求めて、または政治的密命を帯びて、あるいは冒険旅行、仏教交流にと、様々であった。時代は明治から大正、そして昭和にかけてである。河口慧海、能見寛(のうみゆたか)、寺本婉雅(えんが)、成田安輝、矢島保治郎、青木文教、多田等観、野元甚蔵、木村肥佐生、西川一三の十人である。
そして最初のチベット潜入から百年になるのを記念して行われたのが、このフォーラムである。
本書の内容はフォーラムの全記録、資料や解説、百年目のチベット見聞録抄、「百年フォーラム」に寄せて、他の書き下ろしで構成される。
歴史の生き証人として登場した野元甚蔵、西川一三両氏の語る潜行体験談も収録され、意味深いものになっている。
本書発行にはジャーナリストやチベット民俗学者など八人の実行委員の他、多数の人たちがかかわっている。
「十人は、なぜチベットをめざしたか」の副題にふさわしい読み応えのある内容。
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