新内浄瑠璃方で新内研究家・富士松松栄太夫の著書『新内節散歩』(新宿書房刊、同3千2百円)。書いたきっかけは「多くの人たちから『新内は何を語っているのか分からない』とか、ひどい人になると『日本語かね』とまで言われた」ことだという。
例えば《すめる世の 掟(おきて)正しく畿内近国に追っ手かかり 中にも大和は生国とて…》は新内「傾城三度笠−新口村(にのくちむら)」の語りの一節。本書ではなじみのない人にもこのような「新内節」が読み物風に書かれ、ゆかりの地へ案内することで興味が持てるように工夫を凝らしてある。「世話物浄瑠璃」「心中物浄瑠璃」など四章に分け、三大名作の一つ「明烏夢泡雪(あけがらす・ゆめのあわゆき」など十七曲が、三百?にわたり現地の古地図、筋書きの情景描写、用語など細かな解説付きでつづられている。まるでドラマを見ているようで面白い。 |