如月小春精選戯曲集(新版)
如月小春 著 

[『レコレコ』2002年6月 Vol.1(メタローグ)]

 2000年12月、急性くも膜下出血のため急逝した劇作家・如月小春の代表的な戯曲6本を、編年体で再編集した本である。享年44歳の早すぎる死であった。76年に劇作に手を染めて以来、ロマン劇、メタシアター、実験的パフォーマンス、コラボレーション演劇、評伝劇と彼女はその演劇と活動のスタイルをあくことなく更新し続けたが、こうして読み返してみると、そのどれもにある特異な作家としての顔がくっきりと影を落としているのが見て取れる。私たちを取りまくこの「死ぬほど哀しい幸福の時代」を、まるごと構造化しようとたくらむ果敢な顔だ。だから作品中は、溌剌と怯える少女、元気いっぱいの絶望、邪悪な優しさに満ちた都市など、矛盾した光景ではち切れそうに賑やかなのだ。とりわけ初期作品「家、世の果ての‥‥」は絶品である。(岡野宏文)


[東京新聞/中日新聞 2002年1月13日]

「都市生活者の痛み引き受けた表現者」
――長谷部浩(演劇評論家・東京芸術大学助教授)
[注:『如月小春精選戯曲集』、『如月小春は広場だった』、両方の書評として掲載]

[現代詩手帳 2002年4月]

「文字よりもつよい詩」
――小沼純一

 昨年十二月、三軒茶屋のシアタートラムで一昨年亡くなった如月小春作品のリーディングとシンポジウムがおこなわれた。
 芝居として成り立つべき戯曲のなかから、台詞を抜き出し、何人もが交替で朗読する。朗読は、渡辺えり子、川村毅ら、現在第一線で活躍している劇作家たち。印象的だったのは、それらがごく稀にではあるが、たしかに芝居の、戯曲のなかの言葉ではある。だが、声として発されたときにもちうる、力が、多くの、紙の上に書きつけられた文字としての詩よりも、はるかにつよいものがそこにあった。
 

本の詳細を見る→ <ISBN4-88008-272-4

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