会うことは目で愛し合うこと、
会わずにいることは魂で愛し合うこと
−−神谷美恵子との日々
野村一彦・松田瓊子・住川碧 共著

[赤旗 3月17日]

今から約70年前、21歳で亡くなった大学生の恋愛日記。相手は、のちにハンセン病患者に尽くした医師で、『こころの旅』などで知られる神谷美恵子でした。出会い、愛の観念をめぐる思索、両思いの喜びと神への感謝、やがてくる死と会えない不安・・・。昭和初期を生きるあまりに透徹で純粋な魂の叫びが胸を打ちます。

[神奈川新聞02年2月9日 時事通信配信]

青春時代の恋心つづる「不滅の日記」刊行
夭折した野村一彦さん

美智子皇后さまのお話し相手としても有名だった精神科医の神谷美恵子(旧姓前田美恵子)さん(一九一四−七九年)の若き日に、彼女に対するいちずな愛を文学にまで昇華した青年がいた。その青年の日記が、約七十年の歳月を経てこのほど刊行された。著者は、「銭形平次」の生みの親で音楽評論家の野村胡堂氏の長男、野村一彦氏(一九一四〜三四年)。東大の美学科に進学し、音楽評論家として期待されながら、二十歳で夭折(ようせつ)した。

公表された日記『会うことは目で愛し合うこと、会わずにいることは魂で愛し合うこと。』(「港の人」刊、発売「新宿書房」)は、一彦氏が旧制高校の学生だった十八歳のころに書かれたもの。

後にパスカルの世界的な研究者となる友人の前田陽一氏の妹が美恵子さんだったことから、二人は知り合うが、昭和初期という時代背景もあり、互いに愛を告白しないまま、一彦氏の病死によって二人の関係は終わる。

「僕はミミ(美恵子さんの愛称)の瞳を見た! ミミも僕の眼を見た。遠くからではあった、けれども僕等の眼は合ってしまった」。美恵子さんに対する、切ないまでの思いが時代を超え、新鮮な語り口で読む人の胸を打つ。

本の詳細を見る→ ISBN4-88008-279-1 C0095

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