<戦争や健康さえデザインする「インタラクション・デザイン」>
最先端の「インタラクション・デザイン」の概念と方法論を解説した公開講座の書籍化。インタラクション・デザインとは、ナノやバイオなどを含む「先端技術が日常生活に入り込んだ近未来の出来事を予測し、それを受け取る人間の感情を、不安や疑念を描き出そうとする」取り組みだそうだ。
その分野で世界をリードする英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)の教授、アンソニー・ダン氏へのインタビューをはじめ、同校の学生による作品プロジェクトの数々、そして卒業生で世界で注目されるアーティスト・デザイナーのスプツニ子!氏の講義を収録する。
百聞は一見にしかず。何やら機械を背負った犬と管でつながった女性や、機械を介して羊とつながった男性。写真だけを見ると難解な現代アートにも見えるが、その正体は動物をコンパニオン兼外部代用臓器の提供者として使うことを提案するプロジェクトで、前者は呼吸器犬で、後者は透析羊だという。
その他、性器と脇から伸びたホースが鼻へとつながっている男女(人間の嗅覚体験のポテンシャルを探るプロジェクト)など、ただ写真だけを見ると頭の中が「?」で埋めつくされる。でもそれでいいようだ。
男性でも生理が疑似体験できる「生理マシーン、タカシの場合」など、自作プロジェクトについて解説しながらインタラクション・デザインとは何かを説くスプツニ子!氏によると、「みんなにクエスチョンマークをもってもらうためのデザイン」だという。
彼女いわく、人に時間や空間やプライバシーについて考えさせる「どこでもドア」などを提供する「ドラえもん」こそそのデザイナーだという。
インタラクション・デザインは、これまでデザインが扱ってこなかった 死や健康、戦争などにも守備範囲を広げ、人々の態度や発想を変えていくことを目指す。
デザイン・アート関係者はもちろん、無縁の読者もきっと知的好奇心を刺激されるに違いない。(新宿書房 2000円) |