見残しの塔
[熊本日日新聞 2012年9月23日]
熊本日日新聞
 
[徳島新聞(夕刊)、中部経済新聞、デーリー東北 (4月30日)その他(共同通信配信)]
共同通信
 
[ゆうゆう 2011年4月号]
ゆうゆう
 
[本の雑誌 2010年12月号]
本の雑誌
 
[産経新聞「産経抄」 2010年9月21日]
産経新聞
 
[ラジオ深夜便 2010年5月号「おたよりコーナー」]
ラジオ深夜便
 
[8020(はち・まる・にい・まる)2010年1月No.9]
8020
 
[月刊『生徒指導』2009年10月号]
生徒指導
 
[ブックサービス『こんげつの栞』2009年9月号]
こんげつの栞
 
[朝日新聞 2009年8月1日夕刊(一部地域は8月2日)]
 
朝日新聞夕刊
[広報あとう No.644 平成21年7月20日]
 
広報あとう
 
[『うぶすな』2009年7月5日第85号]
うぶすな
 
[堀口俊一、『脈』2009年7月(No.290)]
脈
 
[『女のしんぶん』2009年7月10日(第991号]
女のしんぶん
 
[週刊読書人 2009年5月22日]
週刊読書人
 
[ラジオ深夜便6月号表紙・27〜40ページ掲載(以下は27ページ)]
ラジオ深夜便  ラジオ深夜便
 
[吉田伊佐夫(オリジナル書評)]
『見残しの塔―周防国五重塔縁起』を読む
 周防へ―日向椎葉村から、若狭小浜から、二本の糸が縫い寄せられるように若者や女たちがめざした場所、いま、そこに瑠璃光寺五重塔(国宝)がある。
 久木綾子氏の歴史小説『見残しの塔―周防国五重塔縁起』360ページに、小説を読む楽しさ、喜びを思い出させてもらった。
 番匠修行を続ける椎葉生まれの左右近と寿々、景近、阿岐、晴近ら左右近の家族、小浜の若狭新田氏二代目の治常、正室園子、嫡男常広、側室倭文とその妹万阿、娘の初子、乳母加祢はもとより、近江猿楽師重田三十郎、大工職人兼丈、大内氏お抱え棟梁清原盛光…と、登場人物は多いが、どの人物にも作者のまなざしが行き届き、一人ひとりの短編小説を読むような魅力がある。それぞれ生身の命を背負った人間のイメージが豊かに浮かび上がるからだろうか。
 南の椎葉から竹田、国東、宇佐へ、東の小浜から姫地(路)、室津、鞆浦へ、何のゆかりもない二つの道行きが周防の港秋穂にたどり着き、五重塔建立に収斂されてゆく、その土地土地が明確な輪郭をもってきっちりと描かれ、読者は地図を眺めなから、登場人物とともに旅ができるのも魅力の一つだ。
 「鑿を切らせる」(存分に使いこなす)、「墨打ち」(木取りの線を引き墨糸をとばす)といった番匠用語がふんだんに取り込まれ、職人の世界が活写されるのはいうまでもない。
 最後の一行「だから園子は今日も、待っている」を読み終え、ページを戻して冒頭の「人は流転し、消え失せ、跡に塔が残った」に還る。源平の戦いや南北朝の覇権争いのどよめき、親たちが伝えた敗者の嘆き、塔の耀いにも似た若者たちの春の目覚めの歌、汗にまみれた職人の息遣いが、遠い海の騒ぎのように聞こえる気がする。
 帯惹句の「構想14年、執筆4年、89歳の新人デビュー」に言葉を失った。文章の瑞々しくも端正なすがた、丹念に重ねられてゆく登場人物の行き交い、それをゆるみなく描ききった腕力に、加齢を感じさせない「精神の運動」が窺い知れる。
 長文の「あとがきにかえて」がまた、好ましい。瑠璃光寺五重塔に打ち込まれた巻斗に「此ふでぬし弐七」、その墨書に突き動かされた著者の猛学習もさることながら、著者が教えを請うた多くの専門家や地方史家、職人を丁寧に紹介されているのが爽やかだ。あたかも作中の棟梁清原盛光のもとに多くの職人が集まり五重塔を完成させたように、彼らが久木綾子氏という作者を押し上げ『見残しの塔』に結実させたような趣がある。
『見残しの塔』を読みつつ、『五重塔』の家に生まれた露伴の娘、幸田文と奈良・斑鳩の法輪寺三重塔再建の関わりがしきりに思われた。

■著者について
吉田伊佐夫(よしだ・いさお)
1940年奈良県生まれ。文筆家・『月刊 大和路ならら』執筆メンバー。元産経新聞論説委員兼編集委員。
 
[フロンティアエイジ49号]
フロンティアエイジ
 
[月刊 大和路「ならら」 2009年3月号]
 
[朝日新聞 朝刊京都版 2009年2月7日]
 
[朝日新聞 第2奈良版 2009年2月3日]
 
[文建協通信(文化財建造物保存技術協会) 2009年1月号]
 
[赤坂青山新聞 2009年1月30日号]
 
[西日本新聞 2008年12月14日]
 
[読売新聞 2008年12月5日夕刊]
 
[中日新聞 2008年12月4日嶺南版]
 
[山陽新聞 2008年11月30日]
 
[中国新聞 2008年11月23日]
 
[日刊県民福井 2008年11月22日]
 
[出版ニュース 2008年11月下旬号]
 
[夕刊デイリー 2008年10月31日]
 
[ほんとうの時代 2008年12月号]
 
[南日本新聞・北国新聞 2008年11月2日/神奈川新聞・信濃毎日新聞 11月9日]
 
[福井新聞 2008年11月2日]
 
[宮崎日日新聞 2008年10月19日]
 
[朝日新聞東京版 2008年10月13日]
 
[山口新聞 2008年10月12日]
 
[東京新聞 2008年10月5日/中日新聞 2008年10月10日/北陸中日新聞 2008年10月13日]
 
[朝日新聞西部本社下関版 2008年9月15日]
 
本の詳細を見る→ISBN978-4-88008-389-6 C0093