熊野川
[毎日新聞和歌山版、2007年12月6日]
出版:田辺の作家・宇江敏勝さん、シリーズ10作目のエッセー「熊野川」を/和歌山

◇「伐り・筏師・船師・材木商」聞き書きを収録

 田辺市中辺路町野中、作家、宇江敏勝さん(70)は、熊野川一帯に暮らす人たちからの聞き書きを収録したシリーズ10作目のエッセー「熊野川 伐(き)り・筏(いかだ)師・船師・材木商」(新宿書房、四六判、319ページ)を出版した。

 「天然林を伐る」「青春を川に浮かべて」「木の花咲く町で」「船師ものがたり」の4章からなり、3編は82年に福音館書店から出版したものに加筆、未発表作品「船師ものがたり」を巻末に収めた。

 「昭和五十七年前後の二年間ばかり、わたしは郷土である熊野地方でお年寄りからの聞き書きに熱中したことがあった」と、あとがきで宇江さんは書いている。各編に登場するのは、明治、大正生まれで、筏の流送に深くかかわった人や伐採の名手と言われた人たち。

 陸上輸送の普及で、筏が1963年を最後に国内から姿を消した当時の世相や、炭など山の産物を下流へ運び、帰りは食料、生活雑貨を積んだ船を人力で引いて上ったころのこと、
「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録で熊野川一帯が再び注目されるようになったことなどが、話し手の方言、宇江さんの取材でつづられている。[吉野茂毅]
[産経新聞、2007年11月24日]
田辺市の作家・宇江敏勝さん「熊野川」出版 自然と人のつながり描く 
11月24日7時50分配信 産経新聞

 田辺市中辺路町に居を構え、紀南の山地に住む人々をテーマにした作品を書き続けている作家、宇江敏勝さん(70)が、「熊野川」(新宿書房、本体価格2200円)を出版した。熊野川とともに生きてきた筏(いかだ)師や船師など地元の人々の暮らしぶりと自然のつながりを描いている。

 熊野川は、国道168号が開通する昭和34年までは木材を流送する紀南の大動脈だった。本では山中に住み伐採を仕事としていた人をはじめ、筏を組み木材を流送する筏師や、荷物運搬用の団平舟を操る船師など、現在ではほとんど見られない仕事に就いていた人たちの声を、聞き書きの形で収録している。

 本は昭和57年に発刊した「木と人間の宇宙」(福音館書店)を大幅に加筆したもので、取材は主に昭和55年ごろに行っている。取材対象者には故人も多く、宇江さんは「いまでは聞けない貴重な話もあります。多くの人が熊野川に感心をもち、将来へむけて川と人の結びつきを考えてもらえれば」と話している。

最終更新:11月24日7時50分

[東京新聞、中日新聞、2007年12月9日]
[南紀州新聞 2007年11月21日]
[南紀州新聞 2007年11月23日]
[紀伊民報 2007年11月10日]
本の詳細を見る→ISBN978-4-88008-374-2