ぶらぶら猫のパリ散歩
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都市としてのパリの魅力研究

『アート・コンシェルジュ』(2004年 第6号)

『高知日仏協会会報』(No.21,2003.10)

 欧州熱波のこの夏、かの国ではパリを中心に高齢者約1万人が死亡したと伝えられた。半端な暑さではなかったようだが、そのはずだ。歴史的な景観を保持するこの街は、いまも高さが制限され、昔ながらの石造りのアパルトマンが多いうえ、旭川とほぼ同じ緯度にあることから、夏のいっときのための冷房設備に神経を使っていない。

 この本は、そんな街を活写しながら、なおかつ都市傑作の秘密、街の魅力を紹介している。パリの門、教会、メトロ、カフェ、マルシェ、河、森、墓地。1年間滞在した著者自身によるカラーイラストをふんだんに入れてのルポでもあり、なによりも楽しい読み物だ。勿論、ダメパリも指摘し、そしてダメ東京にも痛烈で、それは都市比較論の展開でもある。

 一度でもパリを訪れた人なら、読んだあと「ああ、もう一度」の思いを描くことは間違いがない。昨今、TVの旅行番組をも多く「この教会の脇に・・・」「あ、ここで・・・」と画面でなつかしむが、この本はそれ以上で、活字がTVを超えてパリへ誘うのは筆力だけでなく、ぶらぶら歩きこそパリの魅力を知るコツ、と教える著者に同調したせいかも知れない。

高知日仏協会
高知市北本町1−5−3
電話088−820−1006
ファクス088ー820ー1017

[マリ・クレール 9月号]

愛らしいイラストが誘うパリガイドの決定版

 手描きイラストによるパリガイドだが、それだけで敬遠しないでほしい。これはパリの歴史と現在についてのかなり鋭いレポートであり、だからといって専門書のように退屈することはない。たとえば、地下鉄の構造や見どころ、市の立ち方などをこんなに面白く、分かりやすく書いた本は、これまでありそうでなかったのだ。それが証拠に、この本は、パリの日本書の書店でベストセラーになっている。

[FIGARO japon(フィガロジャポン)?251 2003年6月20日号]

パリの「かたち」を、絵とエッセイで知る。
『ぶらぶら猫のパリ散歩』
「パリの街を描いていて、いちばんよく使う色はベージュ、ついでグレーである」。そのわけは、パリの建物の多くが、街の地下から採掘される石灰岩でできているから。こんな視点は、イラストを描き、街のなりたちにも造詣が深い著者ならではのもの。
 エッフェル塔、セーヌ河、パリの名物であるカフェやパサージュなど。どのイラストにも猫がいる。自ら称して”ぶらぶら猫”。絵の勉強にパリ遊学をした著者が、ぶらぶら猫としてパリの街を案内する。それも、風景を描いたイラストだけでなく、街の地図やカフェ、アパートなどの見取り図まで添えて。ありそうでなかった、散歩に役立つパリ図鑑といえよう。

もはやガイドの域を脱し、イラスト作品集として楽しめる完成度&充実度。

【北海道新聞5月25日/西日本新聞6月1日】

 一年間のパリ滞在中に足を運んだ場所を、美しいイラストで詳しく紹介した一冊。副題に「都市としてのパリの魅力研究」とあるように、エッフェル塔やシャンゼリゼ大通、モンパルナスのカフェといった名所だけでなく、袋小路の落書きのある建物やスーパーマーケットなど観光客の知らない所も細かく取り上げていて楽しい。

[読売新聞5月13日「生活」欄]

 絵描きを目指して1年間パリで過ごした著者によるイラスト入りエッセー。パリの街角を描いた細密なイラストが70枚、パリのアパートや地下鉄の車両の仕組みなどを図鑑的に描いた図版が46枚掲載され、単なるエッセーでなく、ガイド本や歴史の小百科も兼ねる便利な本。ページをめくるごとに、著者のパリへの愛着が伝わってくる。

[毎日新聞5月11日]

 類書の多いなかで秀逸。それはまず、著者自身がペンと色鉛筆で描いた、じつにパリの感じの出ているスケッチ風イラストが、たぶん百枚近く入っているためだ。見て楽しい。
著者が遊歩者としてパリに一年滞在したことが、この本の魅力の二番目の理由をなす。つまりここには、生活者には見えていても関心を抱かないパリ、旅行者には気づかないパリが描かれ、語られている。だからエッフェル塔やカルチエ・ラタンなどの観光名所を紹介するだけではない。たとえば広場のベンチ、街灯のかたち、石造りの建物の質感と色合い、ゴミの処理法、標準的なアパルトマン内部のありようなど、都市パリのたたずまいがじつに詳しく語られる。さらに具体的なパリ暮らしから市民の共和制意識まで。

 下は上に紹介している『ぶらぶら猫のパリ散歩』から、パリの標準的な通り(6区のオートフィーユ通り)。「パリではかなり道幅の狭い通りでも、段差のある歩道があって、車と人が分離されていることが多い」とある。

[東京新聞 4月23日夕刊]

 パリの街に並ぶ建物の壁の色はオレンジ味を帯びたベージュ、画材ならカラン・ダッシュの41番の色。この石灰岩は、実はパリの地面の下から切り出された。だからパリの地下には坑道が通り、その一部がカタコンベ(地下墓所)になって…。街と散歩が大好きで、繊細な観察眼を持ち、まめに絵や文を書く友の、1年間のパリ体験が詰まった秘蔵ノートを見せてもらう。そんなにこまやかなたのしみに満ちた画文集。

[日刊ゲンダイ 2003年4月23日]

 旅行者でも、居住者でもない「遊学者」の視点でパリの街を散歩しながら、「都市の傑作」と評されるその居心地の良さの秘密をさぐるイラストエッセー集。
 紋章に舟が描かれているように、セーヌ川のシテ島に生まれたパリは、水運によって発達を遂げた「港町」である。街の歴史が凝縮されているそのセーヌ川両岸から、ショパンやモディリアニらが眠るパリ最大の墓地ペール・ラシェーズまで、どこを切り取っても絵になるパリの街を隅々まで歩く。精密なカラーイラストと、時には都市比較論にまで及ぶ話題豊富なエッセーで、読者は著者と同じ視点でパリの街歩きが楽しめるという寸法だ。
 街のシンボルであるエッフェル塔の考察をはじめ、同じ高さ・幅・造りの建物が連続することによって全体がひとつの構築物に見える街の景観、さまざまな教会建築や公園、そして風景を演出する公衆トイレや広告塔まで、街の歴史をひもときながら心地よい散歩のリズムで紹介していく。
 パリの魅力は地上だけにあるのではない。おなじみのメトロや「レ・ミゼラブル」に描かれた下水道はもちろん、2000年もの間採石され続けて出来上がった網の目のような地下坑道の存在など、観光旅行ではのぞけないような場所にも足を延ばしてみる。
 街並みの美しさと反比例するような犬の落とし物とゴミにあふれている街路の実情まで語った、ガイドブックとはひと味違うパリ本。あこがれの花の都の魅力が凝縮された一冊だ。

[出版ニュース 2003/04/中旬]

 99年10月から1年間、絵の勉強のためにパリに滞在した著者は、この街の居心地の良さの虜(とりこ)になってしまった。言葉によるパリスケッチ、イラスト解説、街のイラスト、ミニコラムなどの構成で、パリの「居心地の良さ」の秘密に迫る。マルシェ(市場)の造りなどパリの「かたち」が身近に感じられる。パリは犬の落し物の多さで知られる。道路清掃作業やゴミ回収のあれこれをイラストで紹介。犬の落し物回収バイクまで描かれる。こうした微細な視点がパリの「かたち」を浮きぼりにする。パリ滞在が1日しかないとしたら、著者は<なんといってもセーヌ河岸の散歩を勧める>と。左は「パリの小さな美術館―ロダン美術館」。

本の詳細を見る→ISBN4-88008-284-8