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志賀田孝史

スウェーデン人は甘いもの好き

思うところがあってこの夏、4週間にわたってスウェーデンのウプサラへスウェーデン語の勉強をしに行ってきた(その辺の話についてはおいおいしていこうと思います)。このコース、授業のある日(月~木)のランチはレッスンの料金に含まれていて、食券をもらって教室近くのカフェに行って食べるのだが、朝晩の食事は自分で調達しなければならない。宿舎としてあてがわれるのはウプサラ大学の学生用のドミトリーで、共同のキッチンがついている。基本的にはそこで自炊しろ、というわけだった。

それで、週に何度か近所のスーパーで買い出しして自炊した。自炊といっても、結局は勝手もわからないし面倒くさいしで簡単にしよう、ってことになってしまう。それでたいていは、パンにハムやチーズ、あとは瓶詰めの酢漬けのニシン(向こうではシルという)やキュウリ(ピクルス)に生野菜・果物程度のものですませていた。日本で北欧の料理というと、オープンサンドイッチは有名なもののひとつだろう。ちゃんとしたところで供されるものと比べれば、えらくささやかではあるけれど、毎日のようにそれらしきものをこしらえて食べていた。

しかし食生活でいちばんとまどったのは、加工食品の類が日本のものに比べ甘いことだった。例えば酢漬けのニシンやピクルスは日本ならほとんど甘酢漬け、といった感じだった。シメサバなどは好きなので、シルの味もその延長にあることを期待して買ってきたのに、その甘さにはちょっとがっかりだった。もうすこし甘さ抑えめのほうがぜったい美味しい(でもシルにはいろんな味付けの種類が並んでいて、粒マスタードに漬けたものなどは、ピリッと辛みがきいて、パンにのせて食べると美味しかった)。

オカズをのせるパンも甘かった。スーパー(スウェーデン語ではストールマックナード)に行くとパンの種類はバラエティに富んでいる。日本の食パンのようなタイプのもののほか、黒パンやライ麦など雑穀入りのものなどいろいろあっておいしいのだが、どのパンもほんのり甘い。個人的には、これくらい甘味がしっかりついていれば、何もつけずに食べても充分だった。パンはいずれも日本やイギリスのものよりは小ぶりで、スーパーではスライスしたものも売っているが、厚さは薄い。

きわめつけはケチャップだろうか。ある日、街頭で無料サンプル(といっても200グラムくらい入っていて、大きい)をもらったことがあった。スウェーデンではタダのものを配るなんてことはとても珍しいことらしいのだが、実際配っているものも初めてみるものだった。カレーケチャップ、と書いてあって、帰宅してからおそるおそる開けて食べてみると、確かにカレー味のケチャップ、でも甘い・・・。バーモントカレーの甘口でも、もう少し辛い。カレーのスパイスのきいたケチャップ、ここまではいいけど、とても甘いという、日本人の味覚からは想像もおよばないシロモノだった。もったいないので使ってはみたが、とても全部は使い切れなかった。

自炊とは関係ないが、スウェーデンの名物料理の一つにミートボールがある。これに添えるソースも甘酸っぱいベリーのソースである。好き嫌いはあるだろうが、塩味ベースのミートボールにはけっこうマッチして美味しいと個人的には思っている。こういうこともあるから、甘いものがすべてまずいというわけではない。

しかしなにゆえ、みんなこんなに甘いのか? スウェーデンに限らず、北欧諸国ではお菓子やら、日本でデニッシュとよばれるようなペストリー類はみんな日本のものより甘い。そしてその手の甘いものは老若男女みんな大好きである。だから甘いものはどこでも売っている。スーパーや大きめのキオスクに行けば、甘くカラフルな(体にちょっと悪そうな)駄菓子のテイクアウトコーナーが必ずある。そこで好きなお菓子を自分で袋に入れて、グラムいくらで買うのだが、こればかりは物価の高いスウェーデンでもものすごく安い。

冬の寒いとき、体を温めるいちばん手っ取り早い方法は糖分をとることだから、彼らの甘い物好きは、生物学的な本能のようなものなのかもしれない。まあ寒いときにはお酒という手もあるが、スウェーデンではアルコール類は高いし、買える場所も限られる(そのへんの詳しい話もそのうち)。だから甘いものが苦手な人は、スウェーデンでは生きていけないのではないだろうか? 逆に甘い物好きには天国か? でもお菓子だけでなく、ふだん食べるものまでなにもあんなに甘くしないでいいのにと、日本からの旅行者には思えるのであった。

*志賀田孝史(しかた・たかし)は編集者。北欧おたくが高じて今夏、スウェーデン語を学びにスウェーデンまで行ってきた。

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