あああ

室野井洋子

[2001/07/11]

古本屋を開いた。何とも現実味のない言葉である。

古本屋、古書店といったら、商店街の一角にいつの頃からかずっとあって町にとけこんでいながら、一般の本好きの世界からさらにひとつ奥へ入った価値観と嗜好で取引がなされている業界が、ポンと口を開けたしみ臭い所のように感じてきたからだ。開店したてのわが「ザリガニヤ」にはそのような匂いのかけらもない。

厳密に言えば、古本の他に新刊本も扱い、将来的には本以外のものも売ることになるかもしれないし、壁はギャラリーとする予定なので、古本屋とは言えないのかもしれない。

ひょんなことから北の札幌に住むことになり、さてどうしようとなったとき、あたかも小さな川の流れに乗るようにおのずと古本屋にたどりついた。我々の唯一の持ち物は本であり、それはどんどん増殖しており、また共同経営者は長年、東京の国立で古本屋の店長をしていた根っからの古本屋なのである。

しかし不況に強い古物取引といえども、大量販店「B」のような店以外のいわゆる古本屋ははたから見てもひなびていっているようである。私の友人の古本屋は最近店を閉めてほっとしたと言っている。知り合いが札幌の古書組合に行ったら、老舗の人に、古本屋を開くなんてやめた方がいいと言われたらしい。

それでもやってしまうのが、失うものの少ない者の強みである。もとより地盤も何もない我々にオーソドックスな古本屋はできないし、やるつもりもない。古本のジャンルとしては雑多ながらも、主に現代芸術、映画、音楽、サブカルチャー系の本を扱う。加えて、一般の書店にあまり置かれていないような新刊本を選んで少しずつそろえてゆこうということになった。

置かれていないかどうかはさておき、まず私が以前仕事をしていた(今も時々させてもらっている)当新宿書房に直接取引をお願いしたら快く承諾して下さった。今のところ他に、トムズボックス(絵本)、ワイズ出版フィルムアート社ペヨトル工房の本などを置かせてもらっている。少しずつだが、他の版元の本も一冊単位からそろえている。

これからどうころんでゆくのかはわからないが、もう歳なんだし、たくさん儲けようとも考えていないので、売れる本を、ではなく、売りたい本を売ってゆく方向に力をそそいでゆくつもりだ。

札幌を東西に貫く大通りの公園に面した古いビルの二階にザリガニヤはあります。札幌在住の方、旅行でいらした方も、どうぞお気軽にお立ち寄りください。

*不定期でニューズレターを発行します。
*homepage作成中 
http://www.ai.wakwak.com/~aura-obscura/zariganiya.htm

ザリガニヤ
札幌市中央区大通り西12丁目西ビル2F
tel/fax.011-272-2212


 


あああ
あああああああ