なんとか楽して英語がうまくなりたいという魂胆から、ペーパーバックのエロ小説を読みあさったことがあります。けっきょく、きわどいところを読み散らかしただけでちょっとややこしくなると投げ出してしまい、あまり学習効果があったとはいえないのですが、まるでむだというわけでもなかった。
収獲のひとつは、その種の本に頻出する come という英語の語感を比較的早くつかめたことです。つまり、セックスのクライマックスで日本人の発する 「いく」にあたる英語はgo でなく、come であるということですね。これを知ったときは、こっちの方が気合が入っていてなかなかいいじゃないかと、えらく感心した記憶がある。実際、本で読んでもそれなりに語感がつかめました。
Oh yeah…………commmmmming !
なんてそれなりに英語的興奮したから、この点だけは早熟だった。まさに、頭でなく下半身で理解したことばです。
ところで、先日 NHK のテレビ英会話講座でこの come をとりあげておりました。パンクな男が派手な演技をする若向きの番組で、この手のものも随分変ったなあと思いながら見ていましたが、そのうち別のまじめ顔の講師が出てきて come をつぎのように解説しておりました。
…………come はある実在する場所に出向く・伺うという場合と、ある状態に達する場合にも使われます。例えば、だれかに呼ばれて「いま、そっちに行きますよ」というときは、go でなくI'm coming now.になります…………と説明し、その用例をコント仕立てにまとめていました。
ぼくもそのへんは一応心得ておりましたが、後者の、ある状態に達する場合の例として講師が…………セックスでクライマックスに達するという場合も、go でなくcome となります。それでは、実際の例で見てみましょう…………なんてコント仕立てを期待したんだけど、さすがにやらなかった。NHKでやったら面白いだろうなあなんて、アホだねわたしも。
しかし、セックスで「死ぬ」が古語になったように、「いく」もすでに使われなくなっているのかもしれない。案外、若い連中は「来た、来た、来たぜっっっっ」なんて叫んでいるかもね。今週は下ネタになって、恥ずかしい。
●英語の恥など程度の差こそあれ、誰だってあるでしょう。病気自慢があれば恥自慢があっていいのでは…「それだったら、こんなのどうだ」とお寄せくださると、うれしい。
*著者:三木カオス(本名・並木可雄) 広告会社クリエイティブ・ディレクター(現在バンコク駐在)
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