新宿書房 半世紀の歴史に幕・・・
1月10日に『中日新聞』文化芸能部の宮崎正嗣記者から取材を受けた。その記事が同紙2024年2月6日の夕刊に掲載された。
新宿書房 半世紀の歴史に幕 「周縁」への目配り貫く
ノンフィクションで定評のある出版社「新宿書房」(東京都中野区)が昨秋、半世紀の歴史にピリオドを打った。小規模ながら優れた書き手を次々と発掘し、これまでに約480冊を刊行。自身の高齢もあって廃業を決めたという代表の村山恒夫さん(77)は「ここまで続けてこられたのは周縁、路上での出会いがあったからこそ」と力を込める。(宮崎正嗣)
以下は、同新聞のサイトを覗いてください。山あい棲む古老のような自分の写真に驚く。
https://www.chunichi.co.jp/article/849112
『キャメラを持った男たち−関東大震災を撮る−』、「文化映画ベスト・テン」の第1位に
2月5日発売の『キネマ旬報』2月号増刊(No.1938)を荻窪の書店で購入。お目当ては「2023年第97回キネマ旬報ベスト・テン」だ。
表紙
以下、同誌から関連記事を抜き出してみる。
1. 「文化映画ベスト・テン」第1位は『キャメラを持った男たち−関東大震災を撮る−』だ。(井上実監督、おめでとう!)
選評:「関東大震災を記録した数々の映像。大震災が起きた直後からキャメラを回しだしたのは〈どんな人物だったのか?〉を、手記や遺族の証言から辿る。100年前のキャメラで撮影された現代の東京から過去へと引き込まれる導入が秀逸。撮影されたすべてのカットを並べ撮影に日時と場所を特定することによって浮かび上がる被害の様子や映画創成期を生きた“映画屋”たちの心意気など、モノクロフィルムに刻まれていた豊かな世界に圧倒される。」(p86)
デザイン:桜井雄一郎
2. 「文化映画ベスト・テン選評」:映画映像研究家の奥村賢さん10点(第1位を『キャメラを持った男たち』に)。「近い将来、首都圏大地震が発生するだろうと予測される今日、大正期の関東大震災がふたたび大きな注目を集めている。『キャメラを持った男たち』はその震災を知るうえで貴重な資料となろう。が、同作を第1位に推したのはそれだけでない。解説者(とちぎあきら氏ら)の的確なコメントを交え、初期記録映画界の動向や震災時の撮影技師たちの心情・行動を簡明に描いているからある。映画に関わろうとする者にとって、これは必見の一作といえるのではないだろうか。」
3. 「2023年文化映画総評」(映画評論家・村山匡一郎さん)「震災にまなぶ:……そんな地震災害を考える上で、昨年は1923年に起きた関東大震災からちょうど100年目に当たる。それを象徴したのが『キャメラを持った男たち−関東大震災を撮る』(井上実監督)。震災直後を撮影した岩岡商会の岩岡巽、日活向島撮影所撮影技師の高坂利光、東京シネマ商会の白井茂の3人のキャメラマンを取り上げ、彼らが撮影したアーカイブ映像を使いながら日時と場所を特定し、関東大震災を現在の技術で再現して検証しているが、アーカイブ研究者や現役のキャメラマン、また都市や災害の研究者といった現在の人々の証言で構成されていて興味深い。ちなみに『ノブさんからのメッセージ 手記に学ぶ関東大震災』(桜映画社、2023)は、好感の持てる防災映画であることを付け加えておきたい。」(p192)
この『ノブさんからのメッセージ 手記に学ぶ関東大震災』は知らなかった。ここから閲覧可能だ。松本ノブさん(1895~1978)が残した震災記録の手記。この作品は『キャメラを持った男たち』からスピンアウトした姉妹編のような佳作だ。
4. 第6位:『木版摺更紗―鈴田滋人のわざ』(桜映画社)井手洋子監督(1950~2023)の遺作。
井出監督の『ショージとタカオ』(2011)は第84回キネマ旬報ベスト・テン文化映画」で第1位を獲得している。(p88)
なお関東大震災直後、実際に起きた虐殺事件の一つを描いた『福田村事件』(監督:森達也、脚本:佐伯俊道+井上淳一+荒井晴彦)は「日本映画ベスト・テン」第4位、「読者選出日本映画ベスト30」では第2位、となった。