(69)海を渡った三省さん
[2023/1/21]

私は山尾三省(やまお・さんせい1938~2001)さんから2冊、正確に言うと3冊を、出版させてもらっている。

『縄文杉の木蔭にて――屋久島通信』(A5判変型、1985年、装丁=鈴木一誌、写真=日下田紀三、さし絵=山尾順子)
『回帰する月々の記――続・縄文杉の木蔭にて』(四六判、1990年、装丁=鈴木一誌、写真=山下大明)
『縄文杉の木蔭にて――屋久島通信[増補新版]』(四六判、1994年、装丁=吉田カツヨ、写真=大橋弘)本書は旧版の1985年版を四六判にし、あらたな書き下ろし「樹木」「テリハノブドウ」「旧盆」「肥(こえ)汲み」「縄文杉」の4編を加えたものだ。写真家の大橋弘さんは、その後写真集『1972青春軍艦島』(2000年、増補新版2010年、新宿書房)を出している。


『回帰する月々の記』


『縄文杉の木蔭にて[増補新版]』本扉

昨年、本コラム(63)でこの『縄文杉の木蔭にて――屋久島通信[増補新版]』『回帰する月々の記――続・縄文杉の木蔭にて』の2冊を韓国の出版社が合本・再構成したハングル版が刊行されたことを報告した。この韓国語版をどうしても見せたい人がいた。日高由仁(ひだか・ゆに)さん、『新村(シンチョン)スケッチブック――ソウルの学生街から』(《双書》アジアの村から町から 8、1989年)の著者である。同書は1981年4月からおよそ6年間にわたる留学記、安い飲み屋と市場のある街シンチョンで暮らしたソウル日記だ。


カバー


p4~5「新村案内図」

日高さんは日韓同時通訳の仕事をリタイアされ、今は生まれ故郷の北海道に戻り、札幌に暮らしている。『新村スケッチブック』は、同人誌『VIKNG』に連載されていたものを、同人の宇江敏勝さんに紹介してもらい出来た本だ。日高さんは2021年から『VIKING』誌に10年ぶりに復活され、ふたたび精力的に小説を書かれている。
さっそく、日高さんに韓国語版を送る。そして厚かましく、各編の韓国語タイトルを翻訳してもらった。以下は日高さんによる書名、目次の日本語訳である。文末は日高さんの訳注。

韓国語版タイトル:『昨日に向かって歩く』

目次
新たに刊行される《昨日に向かって歩く》に寄せて

⒈ 本来の故郷に帰ると希望があった
 16  私たちの5つの根
 21  私が望む子供たちの生きかた
 26  命を知る者はすべて弱者である
 31  心の兄弟
 36  しぜんに育つものたち
 40  泣きながらうたう歌
 47  森は私たちすべての故郷
 52  一本の木の教え
 56  小さな家が良い
 61  苦しい時はタンポポを見よ
 66  わが村を訪れた旅人たち
⒉ 昨日に向かって歩く
 78  海の持つ力
 83   昨日に向かって歩く
 88  ヒキガエルが照らし出した慈しみ
 92  若草色の新茶を飲みながら
 97  土の上で静かに素朴に
112   豚の飼育
118   石器時代の火
126  田舎の子に育ちゆく我が子たちを見る喜び
131  鯖の来ない一湊の春
136  自然の時間に出会う
141  鎌の世界とロケットの世界
146  自分だけの道
151  飛ぶように走る高速船トッピー
156  客を畑につれてゆくわけ
161  進化しなくてもよい
⒊ 椰子の葉の帽子をかぶって
168  村人総出で、一緒に建てる家
173  喜びの心で生きるということ*
178  肥汲みの楽しさ
183  地球の、もうひとつの呼び名
188  椰子の葉の帽子をかぶって
192  台風とミョウガ
196  こどもたちよ、火をおこせ
203  離れ猿と渡り合う
208  縄文杉の前で
213  岩に還る道
217  珊瑚が消えゆく海
222  苔と聖書
⒋ 地球、宇宙のひとつの村
230  山に生きる楽しみ
235  野の花を眺めつつ大きな山にのぼる
240  父の死
245  精霊たちの応え
250  浄土と穢土
255  すべての方向にはそれぞれ光がある
260  十五夜の綱引き
265  故郷にはマムシもいる
270  地に根を張った多様性の文化
275  歯車から抜けだした生きかた
283  アメリカを追うな
288  息子と一緒の夜釣り
293  そこで死にたいと思う場所
⒌ 妻が逝く
300  チベット死者の書
308  妻が逝く
313  夫婦墓
318  私を訪ねて来た人々
323  止まらない涙
332  夏草にも負けず
337  科学文明社会の大きな錯覚
344  ないからこそ神々しい所
349  エコトピア報告書
356  妻の仏前に飾った花
360  木の慰め
 
366    訳者のことば

[訳者注]
頂いた本の目次、p8からp12(各編の韓国語タイトル)までの、ほぼ直訳です。
ただp173のタイトル*は、どう訳したらいいのかわかりませんでした。直訳では「よろこんで喜びの気持ちで生きるということ」となります。この「よろこんで」は、<喜んで協力しますよ>と言う時の「喜んで」で、次にまた「喜びの」あるいは「嬉しい」が来ているので、重複のような・・・。原文はどうなっているのでしょうか。

さて、これから私は、『縄文杉の木蔭にて[増補新版]』『回帰する月々の記』2書の日本語目次をおき、2書を構成し直した韓国語版『昨日に向かって歩く』の日高さん訳の目次を見ながら、まるで判じ物のような楽しい作業を始めよう。




原本の目次 『回帰する月々の記』と『縄文杉の木蔭にて[増補新版]』

『新宿書房往来記』(港の人、2021年)には、屋久島で行われた山尾さんの告別式の一日や屋久島までの長い長い物語を書いたエッセイ(空と声の記憶「山尾三省」)が収録されている。