(38)入院雑記――囲町から・続
[2022/5/28]

病院に入院したのは4月21日だったが、準備は2月から始まっていた。近くのかかりつけの整形外科医の紹介状(「診断情報提供書」という)とレントゲン写真を持って、この病院の外来に最初に訪れたのは2月21日9時、初めてF先生にお会いした。3月半ばにレントゲンや血液検査をし、この結果を見てのF先生の診察が4月5日。このとき、入院と手術の日程が決まった。入院前には麻酔科の問診とPCR検査もあった。
入院は次兄が車を用意してくれ、病院まで送ってくれた。別れ際、握手をした。兄の手を握るなんて、子供の頃以来だろうか。
以下、退院の5月21日まで病室でメモした「雑記」から抜き書きしてみた。まずは、4月28日までの1週間分だ。

【4月21日(木)】
10時に次兄の車で病院着。10時30分、入退院受付へ。ここで家族と別れる。病室は8階東の病棟。エレベーターを降りて左(東)に向かう。コ型のスタッフ(ナース)ステーションを囲むように北・東・南の三方に病室が並んでいる。
私の部屋は815号室、4人部屋(4床室)である。病室の配置は、入り口の左に4人のロッカー、右にトイレと洗面台。奥に進むと、通路を挟んで、時計と反対回りに右から1番、2番、3番、4番のベッドがある。2番と3番は北向きの窓に面し、1番、2番にも横に小さな窓がある。私は3番のベッドだ。各ベッドの横には、テレビ(イヤホン使用)と小さな冷蔵庫がある。このコロナ・マスク時代、各ベッドは完全にカーテンで仕切られていて、他の患者は声しかわからない。まるで独房のようだ。頻繁に訪れる日勤の看護師の声がたよりだ。面会禁止、外泊・外出禁止、PC持ち込み禁止、スマホの通話はエレベーター前のラウンジのみとなる。
12時、昼食。きつねうどん、冷奴、バナナ、お茶。ここの朝食は8時、昼食は12時、夕食は18時ということがあとでわかる。
13時30分、2階のリハビリテーション科へ。担当はS理学療法士。両膝の屈伸などを調べる。Sさんは男性で30代後半か。
14時、シャワー。シャワー(お風呂)は隔日、週3回。これも後日わかった。
15時過ぎると、旅客機が病院の真上を飛んでくる。例の羽田新ルートだ。高度は900メートルと言われる。これが19時過ぎまで続く。
18時、夕食。500CCのCS−1という水を21時までに飲む。以後、絶食になる。手術では呼吸を管理するための管を挿入するためこの管を固定するために口の周りのヒゲを剃ってくれと言われ、しかたなくヒゲを剃った。何十年振りだろうか。
21時、消灯。この後も、0時、5時と夜勤の看護師さんたちがチェックに各ベッドをのぞく。

【4月22日(金)】
夜中に3~4回尿意で起きる。スタッフステーションを見ると明るい。ここは眠っていない。サイレン、ナースコールそして叫ぶ声(「イタイヨー」)。
6時、持ち込みの内服薬飲む。薬は入院時に提出し、すべて病院が管理している。血圧検査、体温測定。
8時、整形外科スタッフによる回診。両手に黒マジックで丸を書かれる。これは両膝の手術をするという意味だそうだ。F先生が「心静かにお待ちください」と声をかけてくれる。
8時30分、ストレッチャーに乗せられ、いよいよ別階の手術センターに。看護師ふたりが入り口まで見送ってくれる。
(この後、麻酔の注射のあとは記憶なし)
16時ごろ、目を覚ます。自宅の家族には午後14時30分過ぎ、主治医のF先生から「手術は無事終わりました」との電話があったそうだ。夕食、ほんの少し食べる。この日はICU泊となる。

【4月23日(土)】
11時30分、ICUから病室に戻る。
入院以来、便秘が続く。

【4月24日(日)】
明け方、部屋の天井、周りのカーテンが大きな字で落書きされている。なつかしい立て看のような文字だ。なんども確認したが見える。朝起きてみるとなにもない。いわゆる「せん妄」なのか。
8時、手術の際に両膝に装着された鎮痛液などの管が抜かれる。歩行器(カート)でトイレまで行く。しかし便器から立ち上がれず、看護師さんに助けてもらう。夕食後、すぐに就寝。夜のオシッコ対策に尿瓶を置いてもらう。7~8回使ったか、時々夜勤の看護師が中身を捨てに来てくれる。

【4月25日(月)】
この日から、小水と大便の記録を記入するシートを渡され、自分で記入する。検温、血圧測定。これは毎日の日課になる。
歩行器でトイレ。立ち上がれない。ナースコールで助けてもらう。
6時、採血3本。
8時30分、F医師などが回診。膝の様子を見る。
10時から、足の伸びを計測した後、片足を機器の上に固定しゆっくりと膝の屈伸運動をする(右膝、左膝の各1回60分)。最初は90度から。正式名称はCPM(能動型下肢用多動運動訓練装置)という。膝の曲げ伸ばしのリハビリマシーンだ。
14時、シャワー。
15時40分、術後は初めてのリハビリテーション科へ、迎えの看護師の車椅子で。担当のSさんが待っていた。この日から車椅子と歩行器を併用する。

【4月26日(火)】
朝食。バターロール、スープ煮、フレンチサラダ、牛乳200CC。病院配膳食、初めて完食。
10時からCPM(左膝)、13時から右膝。
14時40分、リハビリ。Sさんは鹿児島市出身で、故郷にいる自分の母親も来週地元の病院で右膝の人工膝関節置換術の手術を受けるという。彼は屋久島の屋久杉にも行っているので、話がはずむ。
17時、F医師のアシスタント、O医師が見に来る。「明日は術後5日なので、包帯をとりましょう」

【4月27日(水)】
8時30分、O医師ら回診。膝のテープ交換。透明テープだけになり、初めて両膝の傷跡を見ることができた。きれいに縫合されている。
食後、前夜にもらった下剤が効いたか、大が出る。
9時20分、リハビリ。休みのSさんの代わりに女性のUさん。歩行器で喫茶店横の空中庭園を散歩。外の空気が気持ちいい。
11時、CPM(左)60分、120度2回終了。
13時、CPM(右)60分、120度あと1回。
外のトイレまで歩行器で行くことがOKとなる。
15時、シャワー。
16時、O医師回診。
17時、日勤の看護師さんが、これで帰ります、また明日と挨拶に。

【4月28日(木)】
今日で入院、1週間がたった。
11時、CPM(右)60分、120度2回目で卒業。
14時40分、リハビリ。Sさんの見守りで、歩行器で200メートル歩行。

(この項つづく)