(30)桜が咲き始めた
[2022/3/26]

3月20日、東京の桜の開花が宣言された。九段下の事務所を離れ、中野白鷺の茅屋の2階に移ってはや9ヶ月。昨年の春の昼の花見が思い出される。コロナ禍で静かな九段の坂道。武道館の裏手の堀割、牛ヶ淵(うしがふち)の土手ではハマダイコンの花の紫模様が今年も広がっているのだろうか。


昨年の3月24日撮影 九段の桜

◆「いいんじゃね次の天皇この方(かた)で」
深夜の地震に驚いた。その地震があった翌日の3月17日の午後。大相撲の中継が中断されて、天皇の長女愛子さんの成年後初の記者会見が始まる。
19日の「朝日川柳」欄には、大阪府の浜田竜哉という方の17字の短詩が載っていた。選者(山丘春朗)評曰く、この記者会見に「好感の句多し」と。
ようやく普通の人、普通の声が聞けた。だったら、女性天皇もいいけど、天皇制もいらないんじゃね。

◆『未来へ』の合評会
「原爆の図丸木美術館」の岡村幸宣さんからメールがあった。4年前の4月、この丸木美術館で「サーカス博覧会」が開かれたのだ(『新宿書房往来記』p 275~参照)。丸木美術館の庭にある桜も咲き出したのかな?そこから見える、東西に広がる都幾川(ときがわ)の広い川原。ここにもハマダイコンの花が咲いていた。その春を思い出す。
「村山恒夫さま、お世話になっております。『原爆文学研究』第20号の特集として『未来へ 原爆の図丸木美術館学芸員作業日誌2011――2016』(2020年)の合評会がとり上げられました。書評は柿木伸之さんと水溜真由美さんです。ご活躍、ご多忙なおふたりに拙文を読み解いていただいたのは本当に恐縮なのですが。原爆文学研究会は20年の活動をもって第1期に区切りをつけることになりました。その回顧の意味も含んだ号ですので、後日あらためて雑誌もお送りさせていただきます。取り急ぎご報告まで。」
この合評会は2020年12月19日の第62回原爆文学研究会で行われたもので、原爆文学研究会機関誌『原爆文学研究』(第20号、2022年3月21日発行、発売元=花書院) に掲載されているという。
その目次を見ると、以下のようになっている。
◇特集 岡村幸宣『未来へ 原爆の図丸木美術館学芸員作業日誌2011―2016』を読む
楠田剛士「『未来へ』の合評会」
柿木伸之「非核の未来へ言葉を渡し、命をつなぐ手仕事の記録――岡村幸宣『未来へ 原爆の図丸木美術館学芸員作業日誌2011―2016』(新宿書房、2020年)書評」
水溜真由美「福島原発事故後の文化運動―岡村幸宣『未来へ 原爆の図丸木美術館学芸員作業日誌2011―2016』を読む」
岡村幸宣「「原爆の図」の文化運動と「手の痕跡」」
楠田剛士(くすだ・つよし)さんは宮崎公立大学人文学部准教授、柿木伸之(かきぎ・のぶゆき)さんは西南学院大学国際文化部教授、水溜真由美(みずだまり・まゆみ)さんは北海道大学大学院文学研究院教授、そして岡村幸宣(おかむら・ゆきのり)さん。14頁にわたるというこの特集、はやく読みたいものだ。


帯付きカバー


カバー


表紙


表見返し デザイン=杉山さゆり

◆「映画本大賞2021」
『キネマ旬報』495号が発売された。お目当ては「映画本大賞2021」の結果発表だ。実はデザイナーの桜井雄一郎さん(『村山新治、上野発五時三五分』のデザイン担当)から電話があったのだ。さっそく、近くの図書館に自転車に乗って行き、『キネマ旬報』最新号を見る。「映画本大賞2021」の第1位は『大島渚全映画秘蔵資料集成』(樋口尚文編著、造本・装丁=桜井雄一郎、国書刊行会)。B5判、820頁、本体価格12000円の大著だ。桜井さん、おめでとう。
しかし、桜井さんが教えてくれたのは別なことであった。42人の選者のうち2人が、「映画本大賞2021」のベストテンの中に『新宿書房往来記』(港の人)を投票してくれたのだ。
吉田伊知郎(映画評論家):第6位
浦崎浩實(激評家):第9位(コメント:⑨著者は村山新治監督の甥。)
そして「映画本大賞2021」ランキングで第43位(全82位中)。
なんと『新宿書房往来記』を「映画の本」として選んでくれた。この嬉しいニュースをすぐに港の人の上野さんに知らせた。港の人のほんとうの映画の本、『私映画 小津安二郎の昭和』(黒田博著)も第40位に入っていることも伝える。
春だ、ここにも小さな花が咲いている。