(22)『往来記』は中央線に乗って、東から西へ
[2022/1/28]

神田神保町の東京堂書店での「新宿書房祭」(2021年12月6日~2022年1月17日)が盛況のうちに終了してから間をおかずに、くまざわ書店武蔵小金井北口店(武蔵小金井駅下車、ドン・キホーテ地下1階)で「『新宿書房往来記』出版記念 合同フェア 新宿書房×港の人」が開催されている(2022年1月17日~3月末までの予定)。なお東京堂書店が発表した1月25日付の「週間ベストセラー」では、『新宿書房往来記』が総合部門で第10位、文芸部門で第8位といまだ踏ん張って、善戦している。『毎日新聞』1月15日の書評欄の影響かもしれない。


東京堂書店のショーケース

今週はお二方の『新宿書房往来記』の感想・書評を紹介したい。いずれもそのご好意に感謝の気持ちでいっぱいだ。
まず、友人の女性ピアノ調律師(ご自身は「老編集者」に対抗して、「老ねじ回し屋」と名乗られている)からの、心あたたまる感想文である。うれしく、くすぐったい気持ちになるが、ご本人の了解を得て転載させていただく。

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老ねじ回し屋からの感想

村山恒夫さま
電車を降りて、すぐにコンビニに入り、毎日新聞を買いました。
紙面を開いたら、書評面に『新宿書房往来記』の記事。そして「村山恒夫」氏の名前が!何度も本の終わりに見ていた小さな4文字が、なんと記事のタイトルの中に!うれしいような、落ち着かないような気分で読ませていただきました。

14日、神田神保町の東京堂書店に行って来ました。「新宿書房祭」の祭場がわからず、店員さんに教えられて振り返ったら、壁一面「新宿書房」ワールド!
神田の東の端に住む子供にとって東京の西側は別の文化圏です。新宿は異界への入り口で、文化的断層に位置する、ある種のパワースポットでした。
笹塚や荻窪の親戚を訪ねるときか、多磨霊園へお墓参りに行くときに、年に数回、通り過ぎるだけでしたが、着いた先は、間違いなく自分の暮らしているあたりとは別世界でした。
10歳のときにわが家も荻窪へ引っ越し、そんな感覚も次第に薄れて行きましたが、友人の口から初めて「新宿書房」と聞いた瞬間、私の頭の中に子供時代の「新宿」が立ち現れました。
さては、この天真爛漫な白雪姫は魔界の首領に絡め取られたか!
しかし、魔界の住人はお目にかかってみたら、魔神風でも妖怪風でもなく、何とも人間らしい人でした。その人となりを友人に尋ねると、即座に、有能で傑出した出版人である、という率直な返事が返ってきました。
東京堂書店の一隅を眺めながら、40年前に聞いた人物評を思い出しました。それが思い違いでなくてよかった、と、なぜか私がほっとして温かい気分になりました。
絵地図の本(『新版 絵地図師・美江さんの東京下町散歩』)を買って、わざわざ東京堂のカバーをかけてもらって、束の間、懐かしい文化圏の香りを満喫しながら帰ってきました。

追伸
「新宿」の英傑、村山さんは今も健在でした。きっとこれからもその「新宿性」を保ち続け、何かの方法で私たちの知的食欲を刺激し続けてくれると信じています。
では、また。今後のお仕事に期待しています。
重ね重ね失礼の段、お詫び申し上げます。😉

老ねじ回し屋より

つぎは阪本良さんが主宰するWebマガジン「プラスアルファツディPlusαToday」
ここで阪本さん自らが書評を書いてくれた。「プラスアルファツディ」のハリウッド特急便、映画、芸能NewsEyeのコラム群の中に、この書評が並ぶ。

「新宿書房往来記」(村山恒夫著)
異彩を放つ刊行書籍群の制作エピソードと「編集とは何か」

『東京スポーツ』の編集局次長・文化社会部長を歴任した、名うての映画ライターが、まるで映画場面を再現・描写するように、往来記の中の4冊の本を見事に紹介してくれている。そして、コラムはこう結ばれている。

村山氏は「あとがき」の最後に次のような一文を寄せている。「最後にひとこと。これから出版編集を目指す人たちが、『本を作るということ』『出版とは何か』『編集とは何か』…というテーマを探す中で、本書に出会い、多少でも興味を持って読んでくれたら、こんなうれしいことはない。」