(9)『新宿書房往来記』がやってくる
[2021/10/23]

新宿書房のホームページにあるオンライン・リトル・マガジン「百人社通信」の片隅で、それぞれ事務所があった場所の名前を冠したコラムを20年にわたって書き継いできている。「三栄町路地裏だより」(新宿区三栄町・2001年~2006年)、「俎板(まないた)橋だより」(千代田区九段北・2013年~2021年)、そして現在の「しらさぎだより」(中野区白鷺・2021年~)である。途中に長く休んだ期間もある。
コロナ禍が始まる前だから、2019年の夏だろうか、長い付きの合いのある、鎌倉の出版社「港の人」の社主、上野勇治さんが、当時九段下にあった事務所にやってきた。
「村山さんが書いてきたコラムを本にしませんか」。
しかし、本当に自由に、どこかに向かって書いているわけでなく、あちこちに寄り道しながら、本にまつわることを調べ、記し、気ままに続けてきたコラムだ。果たして1冊の本になるのだろうか、企画を考える小出版社のひとりとしても、また編集者としても心配になったが、上野さんの熱心な誘いがあり、彼の温かいうれしい提案を受けることにした。そして、すべての構成・編集を港の人の上野勇治さん・井上有紀さんご夫妻におまかせすることにした。
まさに「船頭(編集者)は二人はいらない」のである。
2020年に入り、HPのコラム以外に新聞・雑誌に書いた文章のなどのコピーを探して送ったりした。そして何度かやりとりをした。その間、2020年はコロナ禍で時間もあり、コラムはほぼ週1ペースで書いてきた。
今年の7月のはじめ、上野さんから遅くなりましたと連絡があり、ほどなくプリントされたコラムの束が送られてきた。「三栄町路地裏だより」(63本)「俎板橋だより」(129本)の中のコラムからと、新聞・雑誌に書いた原稿のいくつかが選ばれていた。
そして、7月16日に、上野さんは進行・編集についての相談のために、鎌倉から中野白鷺の事務所までやってきてくれた。上野さんは巻末に「新宿書房刊行書籍一覧」をおきたいと言う。さっそく、編集部の加納さんが、発売元になった本をのぞくリストを作ってくれた。
それから間もなく8月5日には、ついに8章のテーマに分けられ、45本のエッセイとなった初校が出たのだ。そして、再校、三校、念校と進み、昨日(10月20日)、上野さんに責了紙をお返しした。
新刊のチラシもできたようだ。11月下旬刊だという。本のタイトルは『新宿書房往来記』。これは上野さんがこだわった題だ。「周縁」(マージナル)で、「路上」(オン・ザ・ロード)で、さまざまな人々に出会い、本を作ってきた新宿書房にふさわしい題だと思う。
四六判上製カバー装、344ページの本になる。

さあ、2年越しの本が出る。一番待ち遠しい読者、それは私だ。