(3)ヤマケイ文庫版『山びとの記』、澤井信一郎監督のこと、など……
[2021/9/11]

ヤマケイ文庫版『山びとの記』が発売される
小社の「宇江敏勝の本」第Ⅱ期第2巻『山びとの記――木の国 果無山脈』は、しばらく品切れ状態が続いてきたが、このたび、山と溪谷社のヤマケイ文庫の新刊として装いを変え、9月18日に発売されることになった。

このヤマケイ文庫版『山びとの記』は、中公新書版(1980年6月)、新宿書房版(2006年1月)についで3代目の出版となる。ヤマケイ文庫版は新宿書房版を親本(おやぼん)として刊行される。この宇江さんのデビュー作の『山びとの記』は生まれてから41年になる。これからまた新しい読者を得て、長く長く読み継がれてゆくにちがいない。

中公新書版の出版を担当したのは元中央公論社編集者の宮一穂(みや・かずほ)さん。宮さんには、宇江敏勝さんの「民俗伝奇小説集」の第8巻『呪い釘』に投げ込んだ月報に「『山びとの記』四〇年」というエッセイを寄稿してもらっている。今回のヤマケイ文庫版『山びとの記』の解説は、宮さんが執筆したとのことだ。どんなことを書かれたのだろう。とても楽しみである。

澤井信一郎監督のこと
東映の映画監督の澤井信一郎さんが9月3日に亡くなった。1938生まれで、享年83だった。新聞の死亡記事の掲載は9月7日で、この記事の上には、フランス俳優のジャンポール・ベルモンドの死亡記事(9月6日死去、享年88)もあった。
澤井さんの東映入社は1961年。監督デビューは1981年8月の『野菊の墓』(主演=松田聖子)。最初の助監督作品は1961年8月の『ヒマラヤ無宿 心臓破りの野郎ども』(監督=小沢茂弘)だから、実に20年間の助監督を務めた後の監督デビューだった。澤井さんは村山新治(2021年2月14日死去、享年98)の監督作品(『東京アンタッチャブル』(62)など3作)でも助監督を務めている。そして、何よりも『村山新治、上野発五時三五分』(村山新治著、新宿書房、2018)、この本は、深作欣二監督(1930〜2003)、澤井監督、のふたりの「弟子」の力によって誕生することができたのだ。この経緯については、ぜひこの本を読んでいただきたい。静かな温厚な方だった。

もう1つ驚いた訃報があった。

  

これらは、30年にわたり、映画関連図書を精力的に出版してきたワイズ出版の本だ。このワイズ出版社長の岡田博さんの訃報が新聞に載ったのだ。それは澤井監督訃報掲載の2日前だった。岡田さんは8月27日に亡くなったそうだ。享年72。

深作欣二監督は2003年7月に、映画評論家の山根貞男さんとの共著で『映画監督 深作欣二』という大部の本(A5判上製、538頁、定価本体4200円)を出版した。正確に言うと、深作監督が亡くなった(同年1月)後に出版された、山根さんによる大インタビュー本だ。深作監督が全作品61本を語り尽くした本だ。そして、澤井真一郎監督も2006年に、デザイナーで映画研究家の鈴木一誌さんとの共著で、これも大部の『映画の呼吸 澤井信一郎の監督作法』(A5判上製、464頁、定価本体3800円)を出版した。この2冊とも写真、データ満載の映画本。どちらも造本は鈴木一誌+藤田美咲だ。
岡田博さん、澤井信一郎監督……、鈴木一誌さんも参っているにちがいない。
お二人のご冥福を心より祈る。