Vol.61 [2005/1/16]

四谷三栄町耳袋(20)

伊藤勝太郎と久保栄(2)

『銀座伊東屋百年史』(伊東屋)が刊行されて、2ヶ月ほどたち、ボツボツと紹介が載るようになった。まずは、2005年の台北国際ブックフェア(2月15日~19日)の特別展「東アジアの新しい本・美しい本」への出品が決まったことだ。選定は雑誌『本とコンピュータ』プロジェクト総合編集長の津野海太郎さんが、永江朗(出版ジャーナリスト)、臼田捷冶(装丁評論家)の両氏の協力をえて行ったとのこと。出品は3つのカテゴリー、1)新しい出版概念によって作られた本、2)装丁・造本が独創的で美しい本、3)個人的な手作り本、アーティスト・ブック、にわかれ、『銀座伊東屋百年史』はカテゴリー2)から選ばれている。ちなみに、1)には、『電車男』などが選ばれている。

『出版ニュース』(2004.12/下旬号)は、巻頭の口絵「創業時店舗模型(初代・伊藤勝太郎の店)」(芳賀一洋製作)の写真を載せてコラム「ブックガイド」で紹介してくれた。

<わが家では「伊東屋へ行こう」と言うと、娘たちがキャーと歓声を上げる。言ってみれば動物園や遊園地にでかける感じなのである>。永六輔氏がかつて(1972年)伊東屋のリーフレットに寄せた言葉だ。日露開戦の1904年、銀座通りにおそらく日本で初めての、和・漢・洋を併せもった文房具店が誕生した。創業者は伊藤勝太郎。本書は、鼎談(林えり子、山本一力、伊藤高之)、百年史、写真(店舗、広告、宣伝物)、元・現社員らの座談会などにより「和漢洋文具店」の看板を掲げて出発した銀座伊東屋の100年の軌跡を興味深くたどる。左は創業時の店舗(写真説明)。横文字に商いへの意気込みと明治という時代を感じさせる。銀座史、近代文房具史としても貴重。造本がまたモダンである。(A5判・361頁・非売品・伊東屋)


(この項続く)

 

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写真撮影=石山貴美子

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