Vol.59 [2004/3/21]

森のかぞく

 この「路地裏だより」の Vol,10(「白神のブナの森から」)で紹介した小坂珠実さん。白神の山懐で「きみまち舎」を主宰している小坂さんの家「森のかぞく」が2月2日に全焼してしまった。ここに、小坂さんの「再生つうしん」と「支援カンパ」の呼びかけを再録します。1日も早い「森のかぞく」の再建に向け、皆さんの支援をお願いします。小坂さん、へこたれずにいます。本と音楽に飢えているようです。不要なもの、ぜひ彼女に読ませたい、聞かせたいものがあれば、送ってください。
[森のかぞく]再生つうしん 2004.3.7
小坂球実
〒018-3201 秋田県山本郡藤里町琴字田中107-5
                TEL・FAX 0185-79-2282
                  URL: http://shirakami.hots.jp
 ブナの豊かな森の恵みのように、白神の里でお世話になっている皆さんから、友人、旅で出会った全国の皆さん、小舎のHPを楽しみにしていただいている皆さん他、たくさんの皆さんの光を受けて、きょうまで、暮らしてくることができました。ほんとうにありがとうございます。

 朝夕、17歳10カ月で天寿を全うした母牛たきこの息子・多喜福や、母牛もえの娘・ふくとみのお世話をしに、焼け残った牛舎にむかいます。幸いなことに、玄関前の神様のブナの木、スギの木、雪がふりつもっていたため、その下でねむっている草木、牛たちや野良の住まいである牛舎はそっくり生きのこることができました。

 2004年2月2日朝8時ごろ、まきストーヴのまわりでくつろぐ、らち(10歳)トク(9歳)たーちゃん(8歳)をみて、家むかいの牛舎にでむきました。8時20分ごろ、家の前を車で通りかかった方々は、火事には気づかなかったそうです。8時30分ごろ、少しはなれたところの方々が白い煙を見、野焼でもしているのかと思われたそうです。

 ちょうどそのころでしょうか。オスネコのトクが裏口から飛出そうとしていました。私は「火事」という認識がなく、外に出てはダメでしょうというように「トクちゃん!」と言うと、トクは階段にのぼり、私の顔を見ました。それと同時に煙に気づきましたが、消火器やお風呂の水がすぐのところにありながら、「消防車を呼ばなければ」という考えが先立ち、となりやむかいの方々に助けを求めました。

 気づくと、長グツもぼうしもカッケもメガネもぬぎすてて、何とかしたいと走り回っていたようですが、火のまわりの方が早く、家むかいの牛舎が危ない状態になってきました。やけつくようなシャッターをあけ、軽トラを出し、牛たちがあばれることがあれば近隣の皆さんにご迷惑をおかけるすので、ハナ輪にロープをかけ、出口に近かった多喜福を出しました。火の海の中、よくついてきてくれたと、涙が出るようにうれしかったことを覚えています。もう一頭のふくとみは、日ごろからロープをいやがる牛なのですが、いのちがかかっているのでロープをかけ出そうとしました。

 そこに到着した消防の方が、「危ないから離れてください」とおっしゃるので、「この子を残して離れるわけにはいきません」と言うと、「私たちが何とか出しますから」とおっしゃいました。もし出せない時のために、火に遠い牛舎裏側の窓を手で割ってこわそうとしました。ふくとみは、火の中、じっとこわさに耐えているようでした。

 母牛たきこを育ててくれたケンぞうさんと消防の方とでふくとみを出していただき、ほっとしたころ、らちやトクちゃん、たーちゃんという猫たちの無事が気にかかりました。私がトクをみたとき、「らち、たーちゃん出ておいで!」と声をかけたら、私に返事するように育てたネコたちなので「出口は声の方だ!」と出てこれたかもしれません。冬のため、開いている戸は、牛舎側の家の出口のみです。三匹はいつも知らない人がくると、いつも皆でくつろいでる出口と反対の和室が二階に走っていきます。

 あれから一ヶ月がすぎ、三匹を見た方は誰もいません。

 
 のかよさんがライヴで「森のかぞく」を歌ってくださっています。

「ここにいるよ
 森のかぞくよ
 さかさ雨のふる
 地の底のかぞくよ
 ここにいるよ きみをおもい
 手をとりあって 再びめぐる春を」
「ここにいるよ
 森のかぞくよ
 天空にのぼる
 光の中のかぞくよ
 いつかゆくよ
 きみのもとへ
 こころ合わせて
 よろこびのうた歌うよ」
 
●らち 1993年8月25日、職場のあった青山表参道246裏道で出会う。昼食をすませ職場にもどる道で大雨となる。子ネコのらちは、身がつかるほどの水量の中、アップアップし、私の胸に1m以上もジャンプし、助けを求めた。職場の皆で「迷い猫あずかっています」と声をかけたが誰も名乗り出ず、私のかぞくとなる。それ以降、らちの一発芸は「目があったら、胸にジャンプ」。白神の世界遺産と同じ10周年記念をむかえ、「森のかぞく」に来てくださった猫好きの方々に愛される。ここ数カ月具合が悪く、ずっと胸にはりついたまま日々をすごすこと多し。何かの予感を身をもって伝えてくれていたのに、私だけが気づかずにいたと思う。(「らち」は尊敬する良知力さんからいただいた名)

●トク 1994年6月11日、カウンセリングルームのあった中野の事務局でミーティングをしていると、子ネコのSOSの声。外に出てみると、車が道のまん中に止まっていた。運転手は親切な方で、車軸のガードに逃げこんだ手のひらにおさまるようなネコを、そっと救い出し、「どうしましょうか」と私の顔をみた。以降、私のかぞくとなる。もう一匹、ふと道のわきに目をやると、首だけが、ようやく動かせるぼろぞうきんのようにヨレヨレにさせられた子ネコがいた。トクと同じ柄なので、きょうだいにちがいない。残念なことに、その猫たかちゃんは6月13日、息をひきとった。「トク」は長生きしたひいおばあさんからいただいた名。あまりにも小さいので、子ネコ用哺乳ビンでネコ乳をやって育てた。オスなので、三匹の中で一番大きく、やんちゃに元気いっぱいに育った。

●たーちゃん 1995年、どうしても誕生日が思い出せない。らちの初子。らちは出産が不安で、何度も私のひざの上に来たりして、おちつかない。箱の上にトクがすわって、らちを励ましている。たーちゃん(メス)とペコちゃん(メス)、マーちゃん(オス)をうむ。「あーおわった」とばかりに安心して私のところにくるので、オス猫のトクが赤ちゃんを抱え、出ない乳をやろうとしている。かぞくみな初体験の中、何とか、ペコちゃん、マーちゃんはもらわれて、三匹となる。皆、子をうめない体にさせられたので(私の責任)特に、とってもめんどうみのいいたーちゃんが、いつもいつも二匹をなめまわして、きれいにしている姿をみては「いい母さんになっただろう」と心が痛んだ。

 三匹におわかれを言えないまま36日がたった。

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小坂球実さん支援カンパ呼びかけ

「森のかぞく」再建にむけての支援カンパ呼びかけ

去る2月2日、秋田県・藤里町で「きみまち舎」を主宰する小坂球実さんの家屋「森のかぞく」(木造2階建)が全焼し、家財道具もみんな焼けてしまいました。幸い小坂さん自身は怪我もなく無事でしたが、精神的なこともふくめてその打撃は相当大きなものです。小坂さんは現在、知人宅に身を寄せ、2月20日頃には町営住宅に転居する予定です。小坂さんが一日も早く「きみまち舎」を再建し、民宿「森のかぞく」を再開できるよう経済的な応援をしたいと思います。小坂さんの意向もうかがったところ、「森のかぞく」再建のためのカンパということで
お願いできればとのことですので、支援金は、下記の「森のかぞく」の口座(小坂さんが開設したものです)に直接ご入金ください。振込用紙に励ましのメッセージも書き添えていただければ幸いです。

【振込先】
郵便振替口座 02220-3-62860 
口座名  森のかぞく


この呼びかけ文をお知り合いの方々で協力いただけそうな方にお渡し下さい。

【そのほかに出来ること】
●衣類など身の回りのものは地域の方がたの支援でなんとか間に合っているようです。
●音楽と本に飢えているそうです。小坂さんの励ましになるようなCDや本(女性、農業など)を送ってくれると嬉しいとのことです。さらに、CDデッキのあまったものがあればお譲りください。
●思い出の品々もすべて失ってしまったため、小坂さんとの思い出の写真などありましたら差し上げてください。
●名簿もすべて紛失しているのでみなさまのご連絡先も改めて知らせてあげてください。

●すべての送り先=(転居先2月20日頃の予定。詳しくはきみまち舎のHP掲示板
http://shirakami.hots.jp/でご案内しますのでそれ以後にしてください)

秋田県山本郡藤里町粕毛字清水岱7-101 清水岱第二団地第17号 小坂球実宛

呼びかけ人:岡本有佳(編集者)、松本昌次(影書房)、村山恒夫(新宿書房)

*この呼びかけの内容に関する連絡先:
影書房
TEL03-5907-6755 FAX03-5907-6756
kageshobou@md.neweb.ne.jp


この呼びかけに賛同する方は以下にお名前を記入し、小坂さんの知人・友人の方々に広めていただければ幸いです。

賛同人=

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