Vol.52 [2003/07/01]

トークショー&実演「女剣劇って何?~男装の女剣士・中野弘子とともに~」

 女剣劇役者の中野弘子さんの聞書き、700枚(伊井一郎『女剣一代』)。坂手洋二さんのコラム集1400枚(『私たちはこうして二十世紀を越えた』)。枕のような大冊2冊を同じ日に、その重さにウンウンうなりながら、取次に見本をかついでもっていった。

 『異装のセクシュアリティ』の石井達朗さんからは早速、「女剣劇の本はすごい力作ですね。日本の大衆芸能史のなかでも、これは貴重な記録であり、例えば杉村春子伝などでしたら他の出版社でも出すでしょうが、こういう人の評伝を出す出版社は貴重です。こういう版元は、つぶれずに、是非もちこたえていただきたいと思います。(中略)もう1冊の坂手洋二の本。2、3年前にわたしが村山さんに提案したのが、わたしの想像を遥かにこえた立派な本になり、非常に嬉しく思います。早速、お茶大の大学院の学生に回して、宣伝しておきました。」と激励のメールをいただいた。

 石井さんが、「いまニューヨークで評判の連載コラムがあるよ」と教えてくれなければ、この坂手さんの本は誕生しなかった。また、2年前の見世物学会が大阪の飛田遊郭で開かれた際に、伊井さんと出会っていなかったら、この女剣劇の本も生まれていない。

 どちらも時間と歴史についての本である。片方は現代史、片方は昭和日本大衆芸能史。本が売れない時代。厚い、高い(いやー、房主は破格の安い定価だと思っている。厚さを見よ!)。しかし、売れない条件を十二分に満たしている。普通の本なら6、7冊出せるのに。まるで確信犯的自爆出版のモード。

 なんとか、景気をつけようと、『女剣一代』プロジェクトが動き出した。お金もないが、従来の広告宣伝とはちがう何かをしたい。装丁をやってくれた禅の石塚静夫、久保淳志のお二人がポスターも作ってくれた。これを東京都内の飲食店に演劇・映画のポスター貼りをやっている「ポスターハリス・カンパニー」(さすがわささめ代表)に持ち込んだ。下北沢や吉祥寺や新宿ゴールデン街にある飲み屋さんの壁にこのポスターがもう貼られているはずです。

 そして、トークショー&実演「女剣劇って何?~男装の女剣士・中野弘子とともに~」が決定。リブロ東池袋店長の松下善則さんのおかげで実現へ。松下店長は同時に小さな「大衆芸能フェア」を企画してくれる。森秀男『夢まぼろし女剣劇』(筑摩書房)、マキノ雅弘『映画渡世』(天の巻、地の巻、平凡社。実は房主は縁あって、地の巻を編集しています!)、吉村平吉さん、井上ひさしさん、竹中労さんの本などが集まる。

トークショー&実演「女剣劇って何?~男装の女剣士・中野弘子とともに~」
2003年7月24日(木)
午後19時より
リブロ東池袋店(東京豊島区:電話03-5954-7730)
ゲスト:南風(なんぷう)カオル 聞き手:伊井一郎
入場料:500円(税別)ワンドリンク付

 ゲストの南風(中野)カオルさんは、来年芸歴70周年を迎える、大ベテラン。3歳から「中野三兄弟」のひとりとして舞台に立ち、中野弘子、美ち奴のすべてを知るひと。本書でも、藤山寛美と中野弘子との間の悶着に貴重な証言をされている。当日、面白い話が続出すること請け合いである。

       トークショー&実演のポスター

         チラシ

 伊井さんは、これから役者さんや女剣劇関係者を呼んでお話をする、出前トークショーをいつどこでもやるそうです。どうか皆さん、声を掛けて下さい。

伊井一郎のホームページ:
http://tanabekakuei.com/iiichirou/iiichirou.htm

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