vol.39
四谷三栄町耳袋(12) [2002/04/21]
最近、いただいた本などから、いくつかを紹介します。
アルカンタラ修道院のウズラ料理
『太陽が一番のごちそうだった』の渡辺万理さんから、新著『修道院のウズラ料理――スペイン七つの謎』(現代書館)。さっそく、表題になった章を読んでみる。現代フランス料理の礎を築いたといわれるエスコフィエの料理書に登場する「アルカンタラ風ヤマウズラ料理」のルーツを求めて、ポルトガルに近いエストゥレマドゥーラ地方のアルカンタラという小さな村にある修道院や食堂を訪ねて、ペルディス(ヤマウズラ)を食べつくす。
渡辺さんの行動力と胃袋は健在である。でも料理(エッセイ)の本である。8章の扉には写真が入っているが、本文写真が一切ないのは、やや不満な構成。
ところで、スペインはいまちょっとした「修道院ブーム」だそうだ。宿泊させてもらえる修道院をリストアップしたガイドブックが出版されている。お菓子を作る女子修道院の地域別ガイドブックもあるという。うらやましい。
あ
あ
Private World
山と渓谷社の滝沢さんから。アーティストの下田昌克の2年にわたる中国、チベット、ネパール、インド、ヨーロッパの放浪の旅のスケッチブック。写真とイラストの切り貼りコラージュ。まるで60年代のヒッピー本のただずまい。このところ、確実に60年のカルチャー回帰を感じる。よく出せたな、いや今や出せるのはヤマケイぐらいか。宣伝チラシも力が入っている。
あ
あ
長谷川興蔵集 南方熊楠が撃つもの
龍谷大学の松居竜吾さんから、『熊楠研究』第4号を。このなかの杉中浩一郎さんの「『長谷川興蔵集 南方熊楠が撃つもの』を手にして」を読む。杉中さんは宇江敏勝さんの中学校の恩師。宇江さんの本にもたびたび登場する。
長谷川興蔵さんは平凡社時代の大先輩だ。亡くなってから10年にもなるという。享年68。『長谷川興蔵集 南方熊楠が撃つもの』では長谷川さんの熊楠に関する論集、友人、知人らの回想そして中沢新一氏との対談が収録されているという。この本は、関係者、希望者に配布されて、すでに残部がない。しかし、2002年4月以降、南方熊楠資料研究会のホームページ http://www.aikis.or.jp/~kumagusu/
にて公開する予定だという。
長谷川さんは、平凡社時代に『南方熊楠全集』を編集したことで、つとに有名だが、わたしには平凡社をやめた後の小出版社、八坂書房での八面六臂の活躍のほうが、印象に残る。
『熊楠研究』南方熊楠資料研究会事務局:
龍谷大学 国際文化学部 松居竜吾研究室 電話077-543-7633
南方熊楠関係書:
http://www.city.tanabe.wakayama.jp/kumagusu/book/book.htm
『猿の本』
『龍の物語』
あ
あ
追悼西井一夫
「写真の会」会報第51号(2000.3.15)『追悼西井一夫』が未亡人の千鶴子さんから。編集は伊勢功治、デザイン+DTP組版は鈴木一誌と中里岳広。30人あまりの方の追悼文と鈴木一誌の「光の膜――思い出による西井一夫論」、西井本人によるメールによる「西井一夫通信 病床日誌」など。11月25日に西井さんは亡くなったが、最後まで饒舌だった。
追悼集のなかでは、約13年間、西井の部下だったというライター・編集者の追分日出子の文章が面白かった。偏屈編集者、暴走編集者西井一夫の横顔を見事に描いている。そう、本当に暴走編集者だった。『20世紀の記憶』(全20巻)の7年半もまさに暴走の所産。西井は常々、死ぬほど毎日新聞を嫌い、バカばっかりといっていたようだが、実はこの暴走を止められなかった、いや暴走をやらせていた毎日新聞出版局(の人たち)が、えらいのかも。
写真の会:鈴木一誌デザイン事務所気付 電話03-3235-4785
|