vol.17
四谷三栄町耳袋(3) [2001/07/23]
カラカラ
「泡盛&沖縄エンターテイメントマガジン」と銘打った季刊雑誌『伽楽可楽(カラカラ)』が創刊された。発行元はプロジェクト シュリと主婦の友社、発売元は角川書店。
編集プロデューサーは阿南満三。学生起業雑誌『ぴあ』の創業メンバーのひとりで、その後、関西で『プラスキュー』(現在の関西版『ぴあ』)を創刊してきた。映画『パラダイスビュー』(1985年)の映画プロデューサーもつとめるほど、沖縄への思いは熱い。2000年には『決定版 泡盛大全』(主婦の友社)を編集、この『カラカラ』はその発展した雑誌。
「カラカラ」とは泡盛用の伝統的な酒器。創刊号の特集は「クース(古酒)の魅力。」。良識のNHKは『ちゅらさん』の「クースで勝負!」で、「イッキ飲み防止連絡協議会」から、抗議を受けたが(2001年7月12日、朝日新聞ほか)、ここは青空の下のオキナワン・マガジン、ぜんぜん問題ない。
池澤夏樹、EPO、島田雅彦、新城和博(ボーダーインクの『Wander』編集長)などがエッセイを寄せている。うれしいのは、ことし89歳の沖縄を代表するジャーナリストで詩人の牧港篤三(まきみなと・とくぞう)さんが、「懐かしき食の風景」の連載を始めたこと。第1回は「るくじゅうの記憶」。「るくじゅう」とは、豆腐を腐らせて、何度も火鉢の火であぶっては乾かしたもので、沖縄の「寒い」冬に食べるものだそうだ。次号が楽しみだ。
ディープな沖縄雑誌を目指す。沖縄編集、それをヤマトで出す、それも角川ルートで発売。創刊号を見たかぎり、内容の観光度、文化度も中途半端。表紙も地味で、かつてのサントリーのPR誌か民芸関係の雑誌かと見間違えた。ヤマト観光客向けのオキナワン雑誌といえば、日本トランスオーシャン航空(JTA。なぜ南西航空を社名変更したの?)の機内誌『コーラルウェイ Coralway』にはファンが多い。これに負けない雑誌になってほしい。
定価は本体667円。
プロジェクト シュリ
〒541-0047 大阪市中央区淡路町2-5-8-201
Tel.06-6228-7385
<参考URL:泡盛関連ホームページ>
泡盛館 http://www.awamori.co.jp/
沖縄県酒造組合連合会 http://okinawa.awamori.or.jp/
泡盛倶楽部 http://www.awamoriya.com/
泡盛横町 http://www.e-awamori.co.jp/
琉球泡盛むーとぅ家 http://www.awamori.or.jp/index.cgi
地酒横丁 http://www.zizake.co.jp
琉球泡盛王国泡盛大図鑑 http://www.sawamoto-shouten.co.jp
文化の色
かつて大企業のPR誌文化というのがあった。企業のパブリシティ(広報)のために様々な贅沢なPR誌が作られ、競いあった。そこでいつも優れたPR誌としてあげられるものには、たとえばエッソ石油の『エナジー』や富士ゼロックスの『グラフィケーション』などがあった。
印刷用インキの大手の東洋インキ製造株式会社のPR誌『東洋インキニュース』もそのひとつ。このほど、第77号が出た。誌名から想像される内容とちがって、年一回の特集スタイルの文化誌である。判型はA5判とこの手の雑誌では小振りだが、100ページ足らずのなかに、エッセイや写真がぎっちり詰まっている。
最新77号の特集は「生きる文化の色彩考」。「生きる色彩考」のシリーズ最終回の「文化」。いままで「食の色」「衣の色」「住まいの色」「情報の色」をテーマにしてきた。多彩なテーマに筆者(今回は32人もいる)。写真もすばらしい。しかし、ややてんこ盛り気味の編集ぶり。このシリーズ、生きる色彩考の完結をむかえ、もう一度全体をばらして編集しなおしてみたら、どうだろう。特色ある『現代色彩考事典』ができるのでは。
ミュージアム・ボックス展
かつて石子順造(1929 ~77)は世の中の日常生活にあるさまざまな美と形を「俗悪」「悪趣味」の意味の「キッチュ」という概念で説明した。石子のキッチュ研究のある部分は、彼の死後10年近くたった、1986年1月27日に赤瀬川原平らによって結成された路上観察学会で継承された。
石子が町で発見したキッチュの一つに、「箱庭」があった。横丁の塀に富士山を描き、回りに緑を配したものや、盆景や盤景などの縮景芸術の世界である(『ガラクラ百科-身近のことばとそのイメージ』1978年、2000年再刊、平凡社[1])。箱庭はヨーロッパでうまれ、さまざまなミニチュアの世界が作られてきた。日本には昔から盆栽の世界がある。ヨーロッパで「箱庭療法」という心理療法が考えられ、日本には河合隼雄によって、1965年にはじめて紹介された。いまや患者が自らのエネルギーを取り戻す方法として、かなり有効な方法として認知されている。
[1] |
「カストリ雑誌に風呂屋の壁画、デコトラまで日本人の身近なグラフィック・イメージを集めた『ガラクタ百科』。1978年に出版されたものの復刊だが、二十年以上前にこんな先駆者の業績があったとは。脱帽」 都築饗一、朝日新聞、2000年10月15日 |
その箱庭の方法を使った「ミュージアム・ボックス展」が開かれた。
2001年5月17日~7月23日
名古屋市 ロフト名古屋5F 名古屋探偵団コーナー
主催したのは1974年から現代の町や村を見て歩き(フィールドワーク)してきた野外活動研究会の岡本信也や岡本靖子らの面々。今回はいままでメンバーが採集してきた資料をA2判のボックスに実物を箱詰めにしたり、ミニチュア化したり、おこし絵にしたりして、即物的にかつ立体的に表現し、持ち運び可能な展示物にしたてた。
おもな作品には次のようなものがある。
「缶のふた」
「キップの切りくず」
「矢作川の漂着物」
「転用物のある風景」
「おばあさんの衣風俗 定点観測20年」
「木のふりをする電柱」
「街角のとび出し坊や」( 交通安全の標識 )
「昭和の残像:乳母車」
「ペットよけペットボトル」
「牛乳箱」
「牛乳びんとふた」
野外活動研究会
名古屋市中区富士見町4-7-404 岡本信也方
Tel./Fax.052-323-9470
<参考URL>
箱庭療法用具の製造・販売 http://www.meltcom.co.jp
牛フタ倶楽部 http://www2.justnet.ne.jp/~amitsui/
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