vol.11
四谷三栄町耳袋(1) [2001/06/17]
〔木遣り唄とヨイトマケの唄〕
山村基毅さんから、新刊が送られてきた。『森の仕事と木遣り唄』(晶文社、本体2400円)。取材に10年以上をかけた、いい仕事だ。日本列島の各地の山々を、その足で、自分の身体を使って、かつての山の仕事と今の山仕事の違いを確かめながら、書き綴ったもの。でも、残念なことがある。この仕事も、破壊的でパワフルな民謡歌手、伊藤多喜雄(1)とのコラボレーションから始まっている。ふたりの仕事、『北の海の道 人々の唄と人生』というCD-BOOKがありながら、何故この本にはCDを付録につけなかったのだろう。音がほしい本だ。あるいは、晶文社のサイトでサウンドのサンプルをいれるぐらいの、センスがほしい。これは著者でなく、版元への注文か。
木遣り唄から、どうしても山を下りた都市の仕事唄(ワークソング)が気になってくる。
今でも建築現場や道路現場の脇から聞こえる仕事唄と木遣り唄との関係には、なにかあるのだろうか。これは、著者への今後のリクエスト。
父ちゃんのためなら エンヤコラ
母ちゃんのためなら エンヤコラ
もうひとつおまけに エンヤコラ |
美輪(丸山)明宏作詩作曲の『ヨイトマケの唄』だ。新井英一の唄も聞きたい。
ヨイトマケとは、昭和30年代まではよくみられた建築現場で地ならしをする仕事で、女性(母親)たちがおもにたずさわった。(2)
山村の本のなかで、たびたび登場する小泉文夫。小泉さんだったら、世界の樵(きこり)のワークソングを採集してたのかもしれない。朝鮮半島や中国、インド、インドネシアでは?
と、リクエストはどんどんひろがる。今度、鶴見良行さんの本も読み直してみよう。
鉱山に働く鉱夫(坑夫)たちも唄をもっていた。明治以前の鉱山はみな山の中。坑内には支柱として大量の丸太が使われていた。杣(そま)と坑夫、二つの山仕事がここで出会う。二つの仕事唄が交わる。
ずいぶん前の本で中身はうろおぼえ。国会図書館のサイトWeb PACで検索すると出てきた。
『近代民衆の記録2 鉱夫』(上野英信編、1971年、新人物往来社)。この中に「坑内唄」の節がある。
そういえば、ルポライターの橋本克彦には『線路工手の唄が聞えた』という作品がある。線路工夫はいまや差別語。ここの仕事にも唄があった、いや先日も西武池袋線、練馬駅の複線線路の敷設工事現場で砂利をもっこで運んでいる男たちの唇からも微かな唄が聞こえていた。(3)
〔全国ちんどん博覧会〕
『見世物学会ニュース』のvol.03によると、2001年8月29日~31日に大阪、天満宮で第2回全国チンドン博覧会が開催されるとのこと。実行委員長はちんどん通信社(東西屋)の林幸次郎さん、『ぼくたちのちんどん屋日記』の著者である。『見世物小屋の文化誌』の編著者の上島敏昭さんや『見世物稼業』の著者、鵜飼正樹さんも、顧問として参加している。大阪の夏はにぎやかになる。
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