(104)いただいた年賀状、通信、新刊書から・・・

[2021/1/9]

2021年が始まった。有難いことにたくさんの年賀状をいただいた。
そのなかでも、特別にうれしいお知らせを運んできた年賀状を紹介したい。

◆「昨年9月に悲願のお店[はじまるカフェ]を開業しました。
書籍の本文印刷をお願いしている理想社に勤めていた二川(ふたかわ:旧姓・宮内)ふみさんからの年賀状。ご主人の二川透さんが、先に長野県北佐久郡の立科町(たてしなまち)に移住したのは1999年だそうだ。ふみさんは週末になると立科に通っていた。久木綾子さんの『見残しの塔』(2008)はふみさんの理想社時代の最後の仕事だと思う。お二人はいつかこの町で自分たちのお店を持ちたいという夢をもっていた。羽黒山の五重の塔の下で、久木さんの2作目『禊の塔』の発刊を祝うトークショーが開かれたのは、2010年10月16日のこと。この集まりに、二川夫妻は長野県からわざわざやって来てくれた。
「透は、昨年9月に悲願のお店〈はじまるカフェ〉を立科町芦田に開業いたしました。」「私は仕事をつづけつつ、ちょこっとお手伝いしています。」
なんと、ふたりはついにお店を持ったのだ!それもコロナにも負けないで、2020年9月にこのカフェをオープンしたのだ。
https://www.hajimarucafe.com
https://liracuore.jp/a/19330
旧中山道芦田宿(あしだしゅく)にある〈はじまるカフェ〉! なんとか、春か夏には行きたい。このカフェに中に保科百助(ほしな・ひゃくすけ 1868〜1911)の展示コナーがあるそうだ。これもぜひ見たい。また、カフェの左手前に推理作家・土屋隆夫(1917〜2011)の生前の住居(今は空き家)があり、二川さんたちはいつか土屋隆夫記念館をつくりたいと願っているという。


土屋隆夫の本:装丁=田村義也

◆「8年ごしの本が、ついに完成。」
すごい本だ。サイズもボリュームも。だから重い。さらにお値段も。『映画広告図案士/檜垣紀六 洋画デザインの軌跡   題字・ポスター・チラシ・新聞広告――集成』(檜垣紀六=著 桜井雄一郎+佐々木淳=編著 スティングレイ=刊 A4変型判、上製・箱入り 384頁 カバーデザイン=檜垣紀六 本文デザイン=桜井雄一郎・佐野淳子 定価=本体9000円+税 発売=1月29日)
年賀状は桜井雄一郎・佐野淳子夫妻から。映画広告図案士・檜垣紀六(1940〜)の仕事に惚れた桜井さんが、檜垣作品の収集・原稿執筆・デザイン(淳子さんも参加)をほぼ一人でやりとげて完成した。まさに檜垣映画広告600作品が詰まった本だ。桜井さん、本当にご苦労さま!「キネマ旬報映画本大賞」ベストテン入りは間違いない。

◆「ご無沙汰のままに新年を迎えました。この状況、いつまで続くのでしょうね。」
村山新治・村山容子夫妻から。『村山新治、上野発五時三五分』(2018、造本=桜井雄一郎)の著者・村山新治(1922〜)は私の叔父でもある。2021年7月には満99歳となる。妻の洋画家の容子(ひろこ)さんから電話もあった。この1年、会うことができなかった。おふたりとも元気に自宅で暮らしているという。ガンバレ、新治さん。

 

恵贈された新刊書から。

●林浩平『リリカル・クライ(Lyrical Cry)―――批評集1983-2020』(論創社、2020)体裁:四六判、上製、520頁 本体:3800円+税
書名の「リリカル・クライ(叙情的叫び)」とは、三好達治が萩原朔太郎を論じた時に使った言葉だそうだ。「四〇年を凝縮した、地層のような本」(瀬尾育生『週刊読書人』2020年11月20日号)で、2段組を含む本文は500頁を超える大著。ここには新宿書房の2冊の本のエッセイと書評が収録されている。
*「如月小春追想」『如月小春は広場だった』(新宿書房、2002)
林浩平(1954〜)が20歳、如月小春(1956〜2000 享年44)が19歳。ふたりは西荻窪駅の南口にあった「グレル」という酒場で初めて出会う。当時、彼女はこの店でアルバイトをしていたらしい。
*「稀な観察眼と文体を持ったエッセイスト/ダンサー 室野井洋子『ダンサーは消える』(発行=ザリガニヤ/発売=新宿書房、2018)・・・『週刊読書人』2018年11月16日号

●四茂野修『評伝・松崎明――現実は理論よりも常に大きい』(同時代社、2020)
「鬼の動労」を作り出した松崎明(まつざき・あきら1936〜2010)。松崎明を支えることに最後まで力を尽くしてきた著者・四茂野修(よもの・おさむ 1949〜)だからこそできた、本格評伝なのだろう。

●黒川創『もどろき・イカロスの森 ふたつの旅の話』(春陽堂書店、2020) 『もどろき』(2001)、『イカロスの森』(2002、いずれも新潮社)に、「犬の耳」(初出タイトル「新世紀」1999)と書き下ろしの「解説」を収録。「もどろき」とは、京都にある「還来神社(もどろきじんじゃ)」のことを指す。
巻末の「著者一覧――黒川創」を見てみる。私が黒川さんに最初に会ったのは1984年か85年だろうか。86年には、黒川さんが構成した、林幸次郎(現・幸治郎)・赤江真理子著の『ぼくたちのちんどん屋日記』(新宿書房)が出版されている。

●瀧口夕美『子どもとまなぶアイヌ語』(監修=中川裕、SURE、2021)著者・瀧口夕美(たきぐち・ゆみ 1971〜)は北海道阿寒湖畔のアイヌコタンに生まれる。現在、黒川創、北澤街子の兄妹とともに、「編集グループSURE」の編集者として活躍している。

●備仲臣道『叙事詩 砂川』(紅爵社、2020)角書きに「砂川闘争65周年を記念して」とある、A5判44頁の袋綴じ製本の私家版。著者・備仲臣道(びんなか・しげみち)さんは、在野史家。