(49)九段下・耳袋 其のなな
[2019/12/8]

集え!孤独で不自由な者たち—

こんなキャッチの入った「映画監督・柳澤壽男(やなぎさわ・ひさお)傑作福祉ドキュメンタリー5部作連続上映会」が長崎市で始まった。
第1回目の上映会は11月29日に行われた。実はこの上映会の企画者である、西浩孝さんから前日に、以下のメールが送られてきた。

みなさま
ご無沙汰しております。長崎より、編集者の西浩孝です。
今年も残すところ、あと1か月となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。 2019年は柳澤壽男監督の没後20年、長崎で何かできないかと考えておりましたところ、市内の福祉介護施設「すみれ舎」が場所を提供してくれ、以下の上映会が実現することになりました。

映画監督・柳澤壽男
傑作福祉ドキュメンタリー5部作連続上映会
2019年11月29日(金) 『夜明け前の子どもたち』
2019年12月13日(金) 『ぼくのなかの夜と朝』
2020年1月17日(金) 『甘えることは許されない』
2020年2月28日(金) 『そっちやない、こっちや』
2020年3月19日(木) 『風とゆききし』



明日の夜が第1回目、『夜明け前の子どもたち』の上映です。
会場のキャパシティは最大でも50〜60名程度といったところですが、本の販売をおこない、自主上映会の開催も呼びかける予定です。
私は売り子として、1冊でも多く本を買ってもらえるように努力いたします。
またご報告させてください。
どうぞよろしくお願いいたします!
西 浩孝

西さんは『そっちやない、こっちや 映画監督・柳澤壽男の世界』(岡田秀則+浦辻宏昌編著、新宿書房、2018)の編集者である。本書は、2019年5月に『キネマ旬報』の「映画本大賞2018」で第9位に輝いた。このことや本が誕生するまでの話を、本コラム(40)、(24)ですでに紹介している。
そして西さんから上映の翌日にまたメールがきた。

みなさま
長崎より、西浩孝です。
昨日11/29の『夜明け前の子どもたち』の上映会、無事に終了いたしました。
来場者は約30人。
上映後に今回の企画へ至った経緯、柳澤映画の豊かさ、浦辻宏昌さんの執念、本作りにおけるみなさまの努力等々、わたしが30分以上熱弁をふるった結果、本は9冊売れました!
「面白かった」「次回も必ず来る」「周りにも知らせる」という声が多く聞かれたので、来月12/13の第2回目は、さらに多くの本を売るつもりでがんばります。
以上、簡単ではありますが、取り急ぎのご報告まで。
これからもよろしくお願いいたします!
西 浩孝

実は西さん、『そっちやない、こっちや 映画監督・柳澤壽男の世界』の制作途中で勤めていた出版社をやめ、奥様の勤務先の大学のある長崎市に引っ越すことになったが、最後まで本書の編集をやり抜いてくれたのだった。 今年の9月ごろ、西さんから地元長崎市での上映会の計画を知らせるメールがあったが、なんとこんな大きな上映会になっていたとは!
しかも西さんは長崎に移ってから、ひとり出版社を立ち上げた。「編集室 水平線」だ。 編集・組版・装丁まですべて一人でこなし、すでに3冊の本を出している。志のあるものは、いまやどこに住もうと本を出版できる時代なのである。

そんな矢先、名古屋から『岩田信市の ジャズ喫茶グッドマン〜夢かよ』という本が送られてきた。A5判ソフトカバー、174頁、定価本体2000円。ゼロ次元、ロック歌舞伎(スーパー一座)を走り抜いた名古屋の芸術家・岩田信市(1935〜2017)。彼が経営していたジャズ喫茶「グッドマン」をめぐる資料と証言で構成した本だ。発行人は勝原良太。カラー写真も織り交ぜた力作。

こういう本がさりげなく作られる時代なのだ。