(46)九段下・耳袋 其のよん
[2019/11/16]

コラム(44)で紹介した『サーカス博覧会記録集』。2019年4月から5月にかけて、東松山の原爆の図丸木美術館で開催した「サーカス博覧会」の図録だ。A4判40頁中綴じの小冊子だ。主催3者(原爆の図丸木美術館、ポレポレタイムス社、新宿書房)と見世物学会などの3者のサポーターの方々の援助で作ることができた。

新宿書房からも、この展覧会に足を運んでくださった読者や編集者などにこの記録集を送らせていただいた。先日、その読者の方々から、たいへん嬉しいメールやハガキが届いた。一部をご紹介しよう。

・先日は大変貴重な冊子をお送り下さり、ありがとうございました。
「見世物」という文字に本当に久しぶりに出会った!という感動と感慨が胸に渦巻きました。
そう言えば、千住生まれの友人は、「そんな話は大イタチよ!」と言うことがあります。なんのことかと思ったら、昔(多分1950年代)、「大イタチ」の見世物小屋を覗いてみたら戸板に赤いペンキがぶちまけてあったとか。(どこまで本当の話やら。これこそ大板血では?)
昔の東洋のサーカスの写真を見ていると、あの三拍子の音楽が聞こえてきます。今のお洒落なサーカス的エンタテイメントだったら、こんな伴奏は頭に浮かんでこないでしょう。
ずっとしまい忘れていたものを思い出すことができました。これからも時々開いてみようと思います。ありがとうございました。

・『サーカス博覧会記録集』頂きました。有難うございます。
ポスター、チラシ、絵看板に至るまで実に貴重な資料が集められ貴重この上ない博覧会であったことがわかります。記録集をながめているだけで興奮をおぼえます。足を運べなかったことが残念です。

・サーカス、といえば私が見たのはボリショイサーカスで木下サーカスの名前はかすかに聞いております。
今日、『サーカス博覧会記録集』をいただきました。
春に「原爆の図丸木美術館」で日本のサーカスの貴重な資料を公開されたことを知り、本橋成一さんが撮られた写真も拝見したいと思っていました。
 ありがとうございます。

フラミンゴ社という個人出版社をお持ちで、『人間ポンプ ひょいとでてきたカワリダマ 園部志郎の俺の場合は内蔵だから』(2017)を出版されている、詩人の筏丸けいこさんもこの記録集のことを大変ほめてくださり、奈良にある「クロワッサンサーカス」 の清水ヒサヲさんに送るようにとの電話をいただいた。

この記録集、ほとんど手づくり。予算もなく、デザイナーも頼めず、素人が作った。カラーもいまの技術だと、元以上リアルに、ほんとうに綺麗にしあげることができるが、色校正もできない街の印刷所にメールで入稿した。一部原価128円。40ページですから、1ページ約3円で作れたわけだ。カラーコピーより安い。しかし、その素朴で安価な感じが、かえって色褪せたサーカス絵看板を再現するのに適していたとは思えないだろうか。

最後にひとつ。古新聞をまとめて読んでいたところ、『朝日新聞』と『東京新聞』の2紙の訃報蘭で、放浪詩人の高木護さんが10月16日に亡くなれていたことを知る。享年92。高木さんは松本昌次さん(未来社、影書房)と縁があり、サークル村」にも関係されていた。いずれこのコラムで紹介したい。