(33)九段下・耳袋 其のに
[2019/8/10]

星空の映画祭

8月5日、長野県諏訪郡原村で開かれている「星空の映画祭」(7月26日~8月16日、毎夜午後8時から上映開始)に出かけた。正称名称は「第34回星空の映画祭 34th Stardust Theater in Haramura」。

会場は原村八ヶ岳自然文化園の野外ステージだ。『ボヘミアン・ラプソディ』『メリー・ポピンズ リターンズ』『跳んで埼玉』『ファースト・マン』『グリーンブック』など2018~2019年の話題作9作品のラインアップの中に、『よあけの焚き火』(土井康一監督、2018、桜映画社)が入っている。地元の諏訪地方観光連盟から〈諏訪シネマズ〉に認定されたからかもしれない。映画の舞台が諏訪地方であり、ロケ地の大半が同地だからだろう。この夜はその『よあけの焚き火』が上映されるのだ。

山梨県北杜市にある次兄の山荘から彼ら夫婦を車に乗せて、八ヶ岳南麓の道を走る。開場の7時すぎてもまだ夕闇の時間、西の空はまだ明るい。会場で、監督の土井さん、プロデューサーの村山憲太郎(桜映画社長)に会う。元現代書館の村井三夫さんご夫妻、息子さんも駆けつけてくれた。村井さんは現代書館で数々の映画本を編集してきた。退職後、明野町(現・北杜市)に一家で移住し、ご夫妻は息子さんの野菜作りを手伝っている。奥さまからは「前からこの星空映画祭に来たかったのです。この時期、野菜の出荷に追われ、時間も気持も余裕がなかったんです。いい機会をいただきました」と声をかけられた。

8時、すっかり暗くなった会場で定刻どおり始まった。広がっていた雲が動いて黒い空が見えてきた。西の空には入道雲が少しずつ大きくなり高くのぼっていく。スクリーンの上空には星が見え始める。標高1300メートル、野外映画祭としては、もっとも高い場所での上映だとか。かつてはこの会場は霧の発生に悩まされたとの逸話もある。

ほぼ6割の入り、観客はめいめい持参の敷物をひろげて横になったり、座布団や座椅子の上に座って観る。

『よあけの焚き火』で画面に切り替えに多用されている、夕空、交差する飛行機雲、林間風景のシーンになると、スクリーンを越えてまわりの山林や空につながる。この会場の上空が定期航空路のコースなのだろうか、上映中のスクリーンの上を何回も点滅しながら、飛行機が横切っていく。

大藏親子の狂言の稽古が大きな画面の中、大音声で流れる。まるで森のなかの薪能のようだ。

サン・セバスティアン国際映画祭

翌日、桜映画社から、『よあけの焚き火』がスペインバスク州サン・セバスティアンで開催される「第67回サン・セバスティアン国際映画祭」のニュー・ディレクター(新人監督部門)に正式参加するとの、プレスリリースが送られてきた。

サン・サバスティアン国際映画祭 公式サイト


プレスリリース
上の画像をクリックするとpdfファイルが開き、プレスリリースを読むことができます。


海外映画祭参加での必勝アイテムとはなにか。事情通に言わせれば、字幕、通訳、海外セールス、この3つだそうだ。土井監督は同映画祭から招待されるとのことだが、私は村山憲太郎プロデューサーに大藏基誠・康誠親子の同映画祭の参加と舞台披露を強く勧めた。これほどインパクトがあることはないだろう。はたして、大藏親子はバスクの地で狂言を演じることができるだろうか?