(16)再開
[2017/9/26]

 お久しぶりです。書く意欲を失いつつありました。いろいろあって、その気分になれず、半ばあきらめかけてもいたのですが、読みたいと言ってくださる方もいて、再開です。

 休んでいた間、体調がいまいちと言いながらも、ちょうど1年前の9月と今年の5月末から6月はじめにかけて、海外旅行を2度実行しました。昨年はパリへ。はじめてのフランス行きでした。ことしは、バルト三国へ。

 パリ行きは、ずいぶん迷いました。古い女友達ふたりとの旅でした。ひとりはデンマーク在住のインド人女性。もうひとりの仲間は日本人。ふたりとも、1970年代はじめのハワイ留学以来の同年代の友人たちです。日本人のYさんとは、東京で年に数回ランチをいただきますが、インド人のCさんとは、40年近く会っていませんでした。最後に彼女に会ったのは、東京。  

 数年来、3人でヨーロッパ旅行をしようしようと、メールのやりとりをしていたものの、なかなか実行に移せずにいました。主にわたしの優柔不断が原因でした。今回Cさんが、ぜひ行こうと国際電話をかけてきたことも、後押しだったのでしょう。  

 わたしが、旅行会社に勤務する知り合いに頼んで、Yさんとわたしのパリまでの往復切符を手配してもらい、コペンハーゲンにひとり住まい(数年前、デンマーク人の連れ合いが病死された)をするCさんは、エア・ビー・アンド・ビーを利用して、われわれ3人のために、インターネットで民泊を探してくれた。  

 9月半ば、われわれ3人は、シャルル・ドゴール空港で待ち合わせた後、外国人向けの電車バス用の割安チケットを購入、地下鉄を乗り継いで、アパートに向かった。アパートは、ルクセンブルグ公園近くの静かで安全な場所にあり、地下鉄駅にもほんの5分ほどで行ける。アパートの持ち主は、80代の女性画家。夏と冬をスペインで過ごす方と聞いた。  

 近くのスーパーマーケットで、食料品を買い込み、朝はパン、ヨーグルト、チーズ、果物などで簡単にすませた。お昼は、観光の途中で、適当にレストランに入っていただく。クレープの日もあれば、山盛りのツナサラダのシンプルなメニューから、日本人シェフが経営する本格的なフレンチをいただく日もあった。夜は、途中でみつけた総菜店やデパートの食料品売り場などで、出来合いの調理されたおかずを数種類買い込む。わたしは、ほとんどアルコールはだめなのだが、他のふたりは大のワイン好き。帰宅する前に、必ずワインとミネラルウォーターの買い足しを忘れない。  

 アパートの中は、すべて持ち主がそのまま置いていってくれているので、キッチン用具や食器なども、自由に使える。自炊ができるのだ。民泊の楽しい利点だ。小さな中庭のついたしゃれた1階の部屋だったので、気候のいい日は、青空のもとで食べることができた。  

 ほとんどタクシーを使わず、地下鉄とバスを駆使しての移動は、「ひよわな」日本人女性には、かなり疲れるものだったが、めぼしいパリの観光地や美術館など大いに歩き回った。旅の終わり近く、モンマルトルの丘に登ったときは、いささか息もたえだえだったが、なんとかパリ旅行を楽しく終わらせることができた。  

 ただ、美術館に入って見る絵に、思いのほか感動しないのは、年齢のせいなのか、あるいは、まがりなりにも、これまでにすでにどこかで、似た絵を見たことがあるせいなのか。ピカソ美術館で見た、大型のカラフルな婦人像には、引きつけられるものがあったのは確かだが。なんだろう、人は年を取るにしたがって、絵に対する感受性がにぶくなるものなのか。それとも、わたしの中の個人的な枯渇現象なのか。  

 1年近く前のパリ旅行。セーヌ河下りで両岸に見たパリの古い町並みと、鉄でできているとはとても思えない優雅なエッフェル塔の姿は忘れられない。パリはそれほどくすんだ印象をあたえなかった。  


パリ郊外モネの庭(パステル画は笠井)