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冬休み

[2005/1/10]

笠井逸子
 例年どおり年賀状をいただくと、やはり嬉しくなります。年末の欠礼はがきも、いつになく数少なく、ほっとしてもいました。昨年から、がんばって版画を彫って賀状を用意するようになったのですが、第1回目は残念ながら、身内の不幸で使わずじまい。今回は、そのぶん気合と力をこめて、1枚1枚ていねいに刷り上げました。受け取った方の感想はまだ聞けませんが、少しは印象に残ったものになってくれたかな、と期待と不安半々です。

 届いた年賀状を読んでいると、昨年の話題のひとつ『冬ソナ』にふれたものが3通。Uさんは、ご夫婦で「はまって」楽しんだそう。大学仲間のN先生(女性)は、年末の忙しさのなか、「不覚にも、完全版全部見てしまった」とか。年末、NHKはなんと4回目の放送を敢行したのです。それも日本語字幕つきの韓国語のまま。つまり、ヨン様の“なまボイス”を聞くことができたわけです。また「昨年は日本国内でも世界でも、災害や争いごとが絶えず、人は「冬ソナ」のなかにひとときの逃避を求めたのではなかったか」、Aさんの文には、こんな風な意味のことが書かれていました。

 そして愛犬の写真を添えたはがきが3枚。「この頃は、ころがるように時間がたってしまいます」うんぬんがふたりほど。ふんふん、全く同感同感、とうなずくばかり。「昨年は激震の年でした」と書いてきた幼なじみのK子さん。甲状腺の手術も受けた彼女にとっては、本当にいろいろと大変な年だったようです。もうひとり、同様に甲状腺の手術を受けた友人(ともに同年代)がいて、これ女性に断然多い病気であることを知りました。

 横浜に住むYさんからは、音楽つきの手作りアニメEメール年賀が届きました。年頭の決意である「やせるぞー!」の掛け声が含まれていましたが、この決心、もうずいぶん長いこと聞かされているような。ほかにも、大学関係の先生方からEメールによるご挨拶を、数件いただきました。イギリス人のS先生からのものは、年末30日に受信しましたが、あちらの人たちは、ホリデイ・グリーティングというと前もって送るのが常識なのでしょうね。

 わたしの場合、月並みな「ことしもよろしく」なんて、添えるのもしらじらしい気分もして、敢えて絵のみのメッセージにしてみました。特に鋭いメッセージをこめたわけでもないのですが、3個のタマゴが宙に浮いているような図柄(これ偶然のなせるわざなのですが)になり、「とり年:タマゴの夢」なんぞというふざけたタイトルを、自分の中ではそっとつぶやいていたのです。

 はてさて、2005年はいかなる年になるのやら。この休み中、せいぜい読書にいそしもうと、ほとんど10年ぶりぐらいに、アメリカ人作家・詩人であるメイ・サートンのジャーナルや小説を読んでいます。46歳になったとき、突然ボストンの都市生活に別れを告げ、ニューハンプシャー州のネルソンという村に家を建て、ひとり暮らしをはじめた女性の日記は、つかの間静かな東京の休日に、ひときわふさわしい読み物に思えました。

*筆者(かさい・いつこ)は『グリーンフィールズ『サメ博士ジニーの冒険ー魚類学者ユージニ・クラーク』の訳者。
東京都杉並区に在住。夫とボーダーコリー(小次郎)と住む。

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