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年賀状

[2002/01/23]

笠井逸子

元旦の楽しみは、年賀状を受けとることです。ことしは、お昼近くに届きました。「あー、この人、出すの忘れたー。失敗、失敗」などと心のなかで思いながら、1枚1枚めくって眺めていきます。仕事の関係の方からのものにくわえて、長い間会えない田舎の幼なじみたちからの賀状もまじっています。わたしの親戚連中からのもあります。大半は、いとこたちです。2000年10月に、「ミレニアムいとこ会」と名づけて、東京に集まりました。「今年は、九州で再会しましょう」とみなの年賀状に添え書きがされていました。

小さな子供たちを持つ家族からは、お子さんたちの写真入りのはがきが送られてきます。3人の子供をもつ姪っ子からは、もちろん、顔写真入りのにぎやかなはがきが舞いこみました。次々に誕生するので、子供の名前を覚えられません。それぞれに凝った音と漢字が使われているため、ふりがなでもつけておいてもらわないと、ピンとこないせいもあります。

犬好きの友人・知人たちからは、動物の写真入りの年賀状がきます。わが家の愛犬、小次郎のおねえちゃんを飼ってらっしゃる阿佐ヶ谷のKさんからは、ペット全員集合写真つきのしゃれたはがきが届きました。真っ黒のボーダーコリーのナナちゃん、同じく黒づくめのラブラドール・レトリーバーのネネちゃん、黒猫のジゴローちゃん(メスです)、それから一時お預かり中だったキャバリエ犬もいっしょに写っていました。このワンちゃんは、オーストラリアから来たばかりで、白と茶に少しだけ黒も混じった甘えん坊のパピーです。

やや格式ばった印刷文字だけが並ぶ年賀状もあれば、旅行先で撮った風景写真を、1枚1枚ていねいに、時間をかけて、パソコンで印刷された絵葉書風のものもあります。これを見ると、はがきの主が昨年、海外のどこで休暇を過ごしたかがわかります。家族全員の近況をお知らせくださる方たちもいます。長いニュースレターに、1年間の活動をしたためて出される方もいます。英語のニュースレターが1通、ハワイから毎年届きます。連れあいの留学時代のホストファミリーからのものです。もう1通は、ニューヨークに暮らす、わたしの古い友人からです。

毎年どういうわけか、必ず2通年賀状が届いてしまう方がいます。きっと勘違いされるのでしょうね。わたしから来た年賀状を見て、「しまった、出してなかった」とあわてて書かれるのだと思います。それぞれに違った文章が、力強い筆圧で書かれています。

傑作だったのは、義兄のエピソードでした。昨年正月に、この兄の母親は、百歳で大往生しました。末っ子の彼は、母親に特別かわいがられた存在でした。それにもかかわらず、法事に出席するまで、喪中であることをとんと忘れていました。しかも、今回はことさらに張りきって、400枚からの年賀はがきを買いこんでいました。正月も3日を過ぎ、天国のお母さんも許してくれることを願いつつ、彼はせっせと年賀状をしたためました。いったん書きはじめるととまらない性格の義兄は、届いた賀状に次から次へと返事を書きました。ひとり娘に届いた男友だちからの年賀状にまで、返信してしまいました。それも、父親の名前で、堂々と。

昨今は年末になると、欠礼のご挨拶が続々と届きます。年回りでしょうか。四国の甥っ子からも白いはがきが届きました。しかし、一体どなたが亡くなったものやら、説明がありません。あわて者の甥が、慣れぬことをしたものだから、肝心の情報が抜けてしまったもののようです。

かくいうわたしも、出したつもりでお出ししなかった方が、ひとりふたりあったようで、礼を失してしまいました。次回からは、書いた人のリストをきちんと作っておこうと思っています。自分の記憶力なんて、あてになりません。

年賀状のことでは、ある友人から、こんなメールをもらいました。新年のあいさつ状をいただいたのだけれど、「残念ながら、あなたには仕事をお願いすることはできなくなりました」という主旨のことが、書き添えられていたというのです。もらえるかもしれないと期待していた新しい職場でのパートの仕事を、断られてしまったのです。めでたさも半減しました。

大学を卒業した年に他界した父は、年賀状に、その時代時代のできごとを書き記すのが好きだったそうです。わたしは小さくて、父の文を覚えてはいません。しかし、兄や姉たちのお気に入りは、「ジュラルミンが空を飛び・・・」の一節だったとか。人工衛星がはじめて空を飛んだ年の、父の創作文の一部でした。ユーモアのある父でした。

お年玉、当たりましたか。記念切手シールだけでしたが、今年も6枚当たりがありました。全部、わたし宛ての年賀状でした。連れあいは、くじ運がありません。

書き損じた年賀状は、日本ユネスコ協会連盟の回収キャンペーンに寄付されることを、お薦めします。連盟では、集めたはがきを切手に換え、企業に購入してもらうそうです。集まったお金は、「世界寺子屋運動」に利用され、世界中の恵まれない児童のための識字活動資金になります。

はがきの送り先は、次のとおりです。

〒150-0013 渋谷区恵比寿1-3-1 朝日生命恵比寿ビル  12階

   日本ユネスコ協会連盟

「はがき在中」と表に記入して欲しいとのことでした。みなさん、どうぞご協力ください。

2002年が平和な年になりますよう、願ってやみません。

*筆者(かさい・いつこ)は『グリーンフィールズ』の訳者。東京都杉並区に在住。夫とボーダーコリー(小次郎)と住む。

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