[2008/8/29]

　これまで多くの女性監督の作品を紹介してきた、あいち国際女性映画祭が今年も開催される。この映画祭では毎年のように北欧の作品も上映されているが、今回もデンマークの作品が日本初公開ということなのでご紹介したい。

　上映される作品は『ファイター』（Fighter：2007）で、デンマークのナターシャ・アーティー（Natasha Arthy）監督による作品。高校生のアイーシャは熱烈なカンフーファイター。トルコ移民の両親は、彼女が兄のアリのように良い成績をとって医大に入ることを望んでいるが、アイーシャには学校での勉強がどうもピンとこないのだった。そんな彼女は、密かにカンフー道場に入門。道場のエミルに助けられながら、大会に向けトレーニングを積みつつ、しだいに彼に惹かれるアイーシャ。だが宗教や家族の問題もあって、そう簡単には事は運ばないのだった。

　本作のアーティー監督は1969年生まれで、イギリスのブリストルやデンマークのロスキレの大学で学んだ後、子どもやティーン向けのテレビ番組の製作を手がけるようになる。長編劇映画のデビュー作は「Miracle」 (Mirakel：2000)で、この作品で多くの映画祭に参加し、高い評価を受けている。そのほかドグマ作品のコメディ「Old, New, Borrowed and Blue」（Se til venstre, der er en Svensker：2003）も手がけ（こちらの作品が日本未公開というのもとても残念なことなのだが）、本作は彼女の劇場用監督作品としてはこのドグマ作品以来4年ぶりの新作。ヒロインのアイーシャ役を演じたのはセムラ・トゥラン（Semra Turan）。本作が映画デビュー作となった彼女は高校生で、本当に空手を習っていて、国際大会に出るほどの腕前だそうで、道場にいたところをアーティー監督に「スカウト」されたというシンデレラガールである。彼女の恋人になるエミル役はシロン・ビョルン・メルヴィッレ（Cyron Bjørn Melville）。1984年生まれで父親は有名なコメディアンらしい。「The Beast Within」（Menneskedyret：1995）という作品でデビュー後、多くのデンマークの映画やテレビシリーズに出演している。兄のアリ役はニマ・ナビプル（Nima Nabipour）。彼はイラン出身で3歳のときに家族とともにデンマークへやって来たという。彼もテコンドーの道場に通っていて、そこで目に留まって幸運にもキャスティングされたそうだ。本作が長編劇映画デビュー作となった彼だが、本作での演技が注目され、すでにいくつかのテレビシリーズなどで演じることが決まっている。道場主のシフ役にはシァン・ガオ（Xian Gao）で、彼は『グリーン・デスティニー』（2000）などを含む、多くの中国や台湾、香港などの作品で俳優やスタントとして活躍している。

　本作に関してはデンマーク語だが公式サイトがあって、予告編やスチル写真などがみられるので興味のある方はご覧を。映画祭では9月4日（ウィルホール）、6日（ウィルあいち大会議室）、7日（日進市民会館）の上映が予定されており、監督も来場の予定。

　また、この作品のほか、今回は特別企画―シネマ・ピクニックとしてノルウェーの非常に有名な、日本を含む世界で大ヒットしたパペット・アニメーション作品『ピンチクリフ・グランプリ』（Flåklypa Grand Prix：1975）が上映される。ただし日本語吹き替え版。このシネマ・ピクニックという企画、ピクニックに出かけるように家族そろって楽しめる映画をチョイスして上映するものだそうで、こちらは子ども連れで気軽に楽しめる作品だろう。上映は7日（ウィルあいち大会議室）。

『ファイター』

　映画祭や上映スケジュール、チケット等の詳細については、下記あいち国際女性映画祭の公式サイトを参照。

あいち国際女性映画祭2008公式サイト：http://www.will.pref.aichi.jp/main03/main03.html

『ファイター』公式サイト（デンマーク語）：http://www.fighter-filmen.dk/

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