第16回キンダーフィルムフェスティバルで北欧作品の上映

[2008/8/12]

 子どもたちに向け、世界中の良質な映画・アニメを紹介する催し、「キンダーフィルムフェスティバル」が今夏も8月9日から17日まで東京の青山と調布で開催される。今年で16回目を迎えるこの映画祭、今年は長編でデンマークの1作品、短編でスウェーデンの2作品が上映の予定。今回はこれらの作品を紹介したい。

長編『10歳のカーラ―クリスマスの奇跡―』

 長編はデンマーク作品『10歳のカーラ―クリスマスの奇跡―』(Karlas kabale:2007)が上映される。

 ファミリー向けのコメディ作品で、本国デンマークでは昨年11月に公開された。監督はシャルロッテ・サッシュ・ボストルップ(Charlotte Sachs Bostrup)。彼女は1963年生まれ。俳優としての教育を受けた後にラジオやテレビ、映画で演じながら、1995年にはデンマーク国立フィルムスクール(60ページ)の脚本コースを専攻し卒業。その後監督に転じ、本作が長編劇映画の監督作としては6本目になる。

 物語の主人公は10歳のカーラ。彼女は難しい問題を抱えている。彼女はクリスマスには家族全員が集まってほしいと強く願っていた。だが、両親が離婚し、おまけに継父の連れてきた、いたずらばかりして不快でおかしな2人の新しい兄弟たちがいるために、うまくいきそうにないのだが…。

 また、この作品の原作はルネ・シモンセン(Renée Simonsen)。彼女は1980年代、エルやヴォーグなどのファッション雑誌のトップモデルとして活躍していたそうなので、ご存じの方も多いかもしれない。その後、大学で心理学を専攻し、2003年に本作と同タイトルの作品で作家としてのデビューをはたした。このカーラを主人公とする作品は好評だったようで、その後シリーズ化されている。ちなみに本作に引き続きシリーズ第2作「Karla and Katrine」(Karla og Katrine)がボストルップ監督の手で映画化、2009年に公開予定となっている。

 そのほか、主なスタッフ、キャストを紹介するとプロデューサーがトマス・ヘイネセン(Thomas Heinesen、『ワン・アンド・オンリー』(148ページ)のプロデューサー)、脚本をイーナ・ブルーン(Ina Bruhn)、主演のカーラ役にエレナ・アナト-イェンセン(Elena Arndt-Jensen、本作がデビュー作)、母親のリッケ役にエレン・ヒリングセー(Ellen Hillingsø、『ミフネ』(146ページ)ほか多数のデンマーク作品に出演)らとなっている。

 下記の公式サイトはデンマーク語だが、予告編やスチルなどが充実している。また、原作となったカーラのシリーズのうちの一冊、来年映画化が予定されている「Karla and Katrine」(カーラとカトリーヌ)の1章がpdfファイルでダウンロードできるようになっているので、デンマーク語ができて原作の世界を覗いてみたいという方はぜひアクセスを。

 なお、今回の上映では本作のカーラ役を演じたエレナ・アナト-イェンセン、プロデューサーのトマス・ヘイネセンが来日、舞台挨拶を行なう。

『10歳のカーラ―クリスマスの奇跡―』

短編『アナの友だち?』、『ヘルマーおじさんの大切な色』

 短編はいずれもスウェーデンから。『アナの友だち?』(Annas bästa kompis:2006)『ヘルマーおじさんの大切な色』(Min morbror tyckte mycket om gult:2008)の2本。

 『アナの友だち?』の方はマリア・ボルム(Maria Bolme)監督の作品。彼女は1965年生まれ。キャスティングディレクターや女優としての活動が長いが、本作を含め何本かの短編作品の監督を手がけている。アナは先生やママのいうことをきけない少女で、彼女が突然学校を飛び出してしまう…、というお話し。

 本作は2006年のイェーテボリ国際映画祭で初上映されている。監督のキャリアによるものだろう、短編とはいえキャストが豪華で、教師役にマリー・リカルドソン(212ページ)ほか、有名な俳優が何人か出演しているのもこの映画の見どころかもしれない。

 『ヘルマーおじさんの大切な色』はマッツ・オロフ・オルソン(Mats Olof Olsson)監督の作品。物語の主人公、マッティンは1963年の夏、誕生日を迎えた。シャイなおじのヘルメルはマッティンの誕生日パーティーに毎年一番乗りで訪れる。おじはマッティンに毎年、ある色のプレゼントをくれる。そんなおじをマッティンは大好きだったが…。

 おじ役にはクラース・モンソン(Claes Månsson)、彼はスウェーデンやデンマークで多数の映画、テレビドラマで活躍する俳優である。マッティン役はアルビン・ヨハンソン(Albin Johansson)。

 本作のオルソン監督は1949年生まれ。彼は短編やドキュメンタリー映画の監督のほか、映画評論なども手がける。また、心理学者でもある。これまで手がけた多くの作品は国際的な評価が高く、多くの映画祭で上映されている。本作も今年のベルリン国際映画祭で特別賞を受賞した作品。この作品は彼の子ども時代の思い出に基づいたもので、精神を病んでいたおじをモデルにした作品だという。今回の上映ではオルソン監督が来日し、舞台挨拶も行なわれる。

 また、これらの作品のほか、特別上映作品として『マレーネとフローリアン』(『いばらの垣根』(168ページ)として本書「北欧映画―完全ガイド」では紹介)も上映される(本コラム第38、40、42回参照)。なお、いずれの作品も子ども向けということが配慮され、もとの音声に日本人声優が日本語の台詞をその場であてていくボイスオーバー上映という形式での上映となる。映画祭は9日から12日までは東京・青山のこどもの城、14日から17日までは調布市の調布市文化会館たづくり、調布市グリーンホールで開催。プログラム、チケットなど詳細は下記の映画祭公式サイトを参照。

 
『アナの友だち?』
 

キンダー・フィルム・フェスティバル公式サイト:http://www.kinder.co.jp/

『10歳のカーラ?クリスマスの奇跡?』公式サイト(デンマーク語):http://karlaskabale.dk/site.htm

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