ロイ・アンデルション監督の作品、劇場公開中

[2008/5/5]

新作『愛おしき隣人』の公開
 スウェーデンの映画監督、ロイ・アンデルション(Roy Andersson)監督による、『散歩する惑星』(152ページ)以来となる7年ぶりの新作、『愛おしき隣人』(Du levande: 2007)が公開されている。この作品、昨年のカンヌ国際映画祭では「ある視点」部門にノミネート、プレミア上映された。スウェーデン国内でも9月に公開の後、スウェーデンのアカデミー賞ともいわれるグルドバッゲ賞の最優秀作品賞、監督賞、脚本賞を獲得するなど高く評価されている。

 映画は、スウェーデンのとある街を舞台。物語がゆるやかに繋がりながら、哀しく、可笑しさにみちた人々の日常を、垣間見るような感じで描き出してゆく。ある種の短編オムニバス映画といった雰囲気もある作品のようだ。出演者のメイクや、ほとんどスタジオを使い、CGを使った特殊効果はいっさい使っていないにもかかわらず凝った実写映像など、前作に通じる部分も多い。

 出演者は前作と同様、主に素人を抜擢しているが、この前作に引き続いて出演している人も多い。また、日本でも『オールアバウト・アンナ』(All About Anna: 2005)などで知られる監督、ジェシカ・ニールセン(Jessica Nilsson)が教師役で出演している。サウンドトラックは、前作に引き続き元アバのベニー・アンデルション(232ページ)が担当。

 なお、下記のロイ・アンデルション監督サイトの『愛おしき隣人』ページは英語とスウェーデン語だが、ピクチャーギャラリーのコーナーがあって、映画のシーンだけでなく、撮影風景や撮影で使われたミニチュアや実寸大のセットなど、舞台裏も紹介されていて興味深い。
『愛おしき隣人』
デビュー作『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』のリバイバル上映
 さらにもう一つ、『愛おしき隣人』公開にあわせ、アンデルション監督の長編劇映画デビュー作が再上映される。この作品、"En Kärlekhistoria"(1970)は、日本では1971年に『純愛日記』のタイトルで公開されたもの。当時、日本では併映作品との時間的な兼ね合いもあってか、114分のものを20分カットして上映されたものが、今回は完全版、さらにデジタルリマスタリング版として甦る。

 15歳の少年ペールと14歳の少女アニカの純愛を描いた作品だが、本国で大ヒット、当時スウェーデンでは70万人(当時の人口比で国民10人に1人が観た計算になる)の人が映画館に足を運び、その後もたびたびテレビで放送されている。アンデルション監督は、新人にもかかわらず、この作品で先述したグルドバッゲ賞の最優秀作品賞を受賞、そしてベルリンでは金熊賞にノミネートされた。

 本作でデビューをはたしたアニカ役のアン-ソフィー・シリーン(Ann-Sofie Kylin)はその後も女優として活躍、映画やテレビにも出演しているほか、現在は舞台を中心に活動しているという。また、ペール役のロルフ・ソールマン(Rolf Sohlman)も俳優やテレビドラマの監督として活躍している。ちなみに2006年にSKIPシティ国際Dシネマ映画祭に参加した『太っちょ泥棒のラブライフ』(本コラム第33回参照)のプロデューサーは彼である。

 ほかにスタッフでは、この作品で映画音楽家としてデビュー、その後ラッセ・ハルストレム(220ページ)監督の『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(73ページ)など多くの北欧作品を中心に音楽を担当したビョルン・イスフェルト(231ページ)がいるほか、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』やビレ・アウグスト(233ページ)監督の『愛の風景』(94ページ)などの撮影を手がけるイェリエン・ぺーション(217ページ)が撮影監督をつとめている。

 このように、こちらも再上映とはいえ、70年代スウェーデン映画を代表する作品のひとつなのでお見逃しのないように。
『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』
 日本語版公式サイトのインタビューで語っているように、このデビュー作、そして2作目の『Giliap』(1975)は一人の登場人物を描く、伝統的な手法を用いたものの、退屈なのでもっと違う方法で撮りたいと思ったアンデルション監督は、いくつかの短編を除き、『散歩する惑星』までCM製作に専念することになる。彼はCM作品をスウェーデンだけでなく、ヨーロッパを中心に各国で多数手がけるが、コメディタッチでユーモア満載のものが多い。いまの時代、ヨーロッパまで行って現地のテレビ放送を観るまでもなく、Roy Anderssonでインターネットを検索してみると、実際の作品もいくつか観られるので、興味のある方はぜひお試しを。

 日本版配給はスタイルジャム、ビターズ・エンド。現在、両作品とも東京の恵比寿ガーデンプレイスで上映中。今後、大阪の梅田ガーデンシネマで5月10日から上映開始となるなど、各地で上映の予定。詳細は下記日本語版公式サイトを参照。
『愛おしき隣人』『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』公式サイト:
http://www.kittoshiawase.jp/
恵比寿ガーデンシネマ公式サイト:http://www.kadokawa-gardencinema.jp/yebisu/
梅田ガーデンシネマ公式サイト:http://www.kadokawa-gardencinema.jp/umeda/
スタイルジャム公式サイト:http://stylejam.co.jp/
ビターズ・エンド公式サイト:http://www.bitters.co.jp/
ロイ・アンデルション監督サイトの『愛おしき隣人』サイト(英語/スウェーデン語):http://www.royandersson.com/dulevande/

ノルディックシネマ・インフォメーションメニューTOPへ