「山形国際ドキュメンタリー映画祭2007」に北欧から2作品が参加 |
[2007/10/1] |
ドキュメンタリー映画は、一部を除くと公開の機会が少ない。そんなドキュメンタリー作品を世界から募って上映する貴重な映画祭が2年に1度、山形市で開催されていることは、ご存じの方も多いだろう。この「山形国際ドキュメンタリー映画祭(YIDFF)」、今年は10月4日(木)から11日(木)までの1週間、山形市内の5会場を中心に開催される。1989年から開催されているこの映画祭だが、長年にわたる地道な取り組みが評価され、今年「サントリー地域文化賞」を受賞した。毎回北欧からの作品も多く出品され、高く評価されているが、今年の映画祭でも国際コンペティションにデンマークとフィンランドからの作品が1本ずつ参加の予定なので、今回はこの2作品について紹介しよう。 デンマーク作品『僧院物語』(The Monastery:2006) 82歳になる独身の老人、ヨーン・ローエルセン・ヴィーは、50年前にデンマークの地方にある古城、ヘスビアー城をロシア正教の修道院にするため買い取った。彼は荒れ果てた古城を、人が住めるようにとひとり奮闘し、ついにはモスクワまで訪問。すると念願がかなってロシア正教から修道院として使えるかどうか調査するためにロシアから尼僧のアムヴローシヤらの一行がやって来る。彼女たち一行は古城を修道院として認めるが、引き換えに大改装をせまられることに。建物の整備のために彼女たちはどこを直そう、あそこをああしようと、自分たちのやりたいようにやっていくが、長年一人でやってきたヴィー老人にはなかなか受け入れられず、ついつい衝突してしまう……。 この作品では、荒れ果てた古城に住み着く愛を知らない、偏屈で孤独な老人と、尼僧とはいえ若く現代的な女性とその周辺の人たちとのコミュニケーションのようすを主に描いている。老人と彼女たちとの世代的なギャップや文化的な価値観の違い、あるいは老人の生き方など、うまくとらえた作品である。 本作品の監督は、パーニレ・ローセ・グロンケア(Pernille Rose Grønkjær)。彼女は1973年生まれで、1997年にデンマークの国立映画学校(60ページ)でドキュメンタリー映画の監督を養成するコースを卒業、主にテレビのドキュメンタリー番組の製作に携わっているようだが、2002年の「Repeating Grandpa」(Min morfar forfra:2001)などで、国際的にも高い評価を受けている。長編映画として上映される監督作品は、本作が初めてのようだ。 コミュニティ・サイトのMySpaceにこの作品に関するサイトがあって予告編をみたりすることができる。アドレスは下記参照。 作品の上映は、10月7日(日)16時から山形市中央公民館6階、9日(火)16時30分からフォーラム5、の2回行なわれる。 |
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フィンランド作品『革命の歌』(Kenen joukoissa seisot:2006) 1970年代、東西冷戦さなかのフィンランドで活躍した反戦や社会主義革命の歌をうたうグループやシンガーをとりあげた音楽ドキュメンタリー作品。その名もアジット・プロップ(Agit Prop:本来は共産主義活動のアジテーションとプロパガンダの意味)というグループのほか、フィンランドでは一世を風靡した人々の現在にいたるまでをライブ映像を交えながら追っている。 北欧で音楽物のドキュメンタリーというと、ラッセ・ハルストレム監督(220ページ)の『アバ・ザ・ムービー』(本コラム第6回参照)、アキ・カウリスマキ監督(228ページ)の『トータル・バラライカ・ショー』(106ページ)、ミカ・カウリスマキ監督(228ページ)の『モロ・ノ・ブラジル』(169ページ)、クヌート・エーリック・イェンセン監督(231ページ)の『歌え! フィッシャーマン』(164ページ)など、日本で公開されて評価も高いものも多い。本作品も同じジャンルのものの一つには違いないのだが、反戦や反帝国主義などのスローガンを織り込んだ歌の数々はけっこう強烈な印象を残す。やってる本人たちはまじめだし、当時、ユーロビジョンなどのコンテストにも出演しているほどで、実力も人気もあった人たちなのだが、今になるとけっこうコミカルに聞こえたりするものも多く、癖になりそうな曲も多い。 その辺は映画祭の実行委員会も気づいたとみえて、映画祭のイベントのひとつ、「映画に唄えば」という企画の中でも本作中の曲が取り上げられる。この催し、今回参加する作品の中に出てくる歌の数々に、カラオケ字幕をつけてみんなで歌おうというもの。本作の場合だとフィンランド語発音のカナ書き字幕が映像にあわせて流れるのだが、フィンランド語の発音は日本語に近いので歌いやすく、曲自体も"革命歌"なわけで、けっこう盛り上がるのではないだろうか。 監督はヨウコ・アールトネン(Jouko Aaltonen)。彼は1956年にフィンランドのトゥルクで生まれ、ヘルシンキ工芸大学映画学部を1984年に卒業。編集、プロデューサー、編集、脚本などもこなしながら多くのドキュメンタリーの監督を担当。バラエティに富んだ環境下の、多くのトピックを取り上げている。本作ではフィンランドのアカデミー賞に相当する、ユッシ賞の最優秀ドキュメンタリー作品賞を受賞している。活動の中心はイルーム(Illume)という製作会社で、下記の公式サイトでフィルモグラフィなどが英語で紹介されている。 作品の上映は、10月6日(土)15時30分から山形市中央公民館6階、9日(火)14時30分からフォーラム5、の2回行なわれる。また、「映画に唄えば」は8日(月)20時から、山形シネマ旭で開催(のどをうるおすワンドリンク付き、1500円)。 国際コンペティションには、このほか日本の河瀬直美監督の『垂乳女』(2006)など15作品が参加する。今回は各国から969本の応募があったというが、どの作品がグランプリに輝くのか、楽しみなところだ。ちなみに表彰式は10日(水)18時から。翌11日には受賞作品を一挙上映とのこと(スケジュールは表彰式のあと発表)。 |
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山形国際ドキュメンタリー映画祭公式サイト:http://www.yidff.jp/home.html MySpaceの『僧院物語』サイト(英語):http://www.myspace.com/themonastery Illume公式サイト(英語):http://www.illume.fi/Englanninkielinen/Framesetko.engl.htm |