ベント・ハーメル監督のブコウスキー映画、日本公開

[2007/8/20]

 本コラム第8回で取り上げたが、『卵の番人』(111ページ)、『キッチン・ストーリー』(178ページ)で知られるノルウェーのベント・ハーメル監督(221ページ)による初のアメリカロケ作品にして、アメリカの俳優陣を起用した作品、「Factotum」(2005)が、『酔いどれ詩人になるまえに』という邦題で、ようやく、というべきか、日本でも公開される。

 この作品、チャールズ・ブコウスキーの彼の自伝的な同名小説(邦題は『勝手に生きろ』)で描かれたエピソードにおおむね基づいている。だが原作がブコウスキーの放浪時代、ちょうど第二次世界大戦の末期から終戦後までを描いているのに対し、本作では時代が現代に移し替えられている。移し替えられてはいるものの、原作との違和感はほとんどないと言ってよいだろう。原作や、関連するブコウスキーの作品の中から巧みにエピソードを抽出して、じつにうまくブコウスキーの人となりを、現在のアメリカによみがえらせている。ブコウスキーとハーメルという、パンクな2人の取り合わせだからこそなしえた好作、といえるのではないだろうか。

 本コラムの第8回でも紹介しているが、出演はチナスキー役にマット・ディロン、ジャン役にリリ・テイラーなど。またプロデューサーは『ダウン・バイ・ロー』などジム・ジャームッシュ作品も手がけるジム・スタークで、脚本はスタークとハーメル監督の共同による。ちなみにハーメル監督は、現在はノルウェー本国でコメディ「O' Horten」を製作中とのこと。本年末には本国で公開予定のこの作品、ノルウェーの鉄道員が主人公だそうで、今から楽しみである。

 なお、本作の公開にあわせ、ブコウスキーの原作の邦訳版の方も復刊されている。本作をご覧になる方には、この原作本とか、あるいは小社刊行のブコウスキー詩集「ブコウスキーの尾が北向けば…」(改定新版)、「ブコウスキーの3ダース」、「モノマネ鳥よ、おれの幸運を願え」、「ブコウスキー詩集」なども併せてお読みになることをお勧めしたい。

 作品は8月18日より銀座テアトルシネマ(ロードショー)、シネセゾン渋谷(レイトショー)で公開。

『酔いどれ詩人になるまえに』
『酔いどれ詩人になるまえに』公式サイト:http://www.yoidore.jp/
銀座テアトルシネマ公式ページ:http://www.cinemabox.com/schedule/ginza/index.shtml
シネセゾン渋谷公式ページ:http://www.cinemabox.com/schedule/shibuya/

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