アニカ・トールによる映像作品(2)

[2006/9/18]

 今回は第36回に引き続き、小社刊行書『海の島』の原作者、アニカ・トールによる映像作品を紹介する。前回は彼女が関わった2003年までの映像作品を紹介したが、今回はいまのところ映像作品としては最新作でもある「海の島」のテレビドラマ版についてふれたい。

テレビドラマ版「海の島」概要
 このドラマのシリーズタイトルは、4部ある原作の最初の作品と同じ「En ö i havet」で、直訳だが「An Island in the Sea」という英語タイトルもつけられている。原著では『海の島』から最終作「Öppet hav」(海が開けて)までにあたる内容が、スウェーデンテレビ(SVT)で2003年10月11日から毎週土曜夜に、1回30分で8回にわたって放映された。その後、ノルウェーなど北欧を中心に、他のいくつかの国でも放映された。

 このシリーズではアニカ・トールが脚本を手がけたほか、監督はトビアス・ファルク(Tobias Falk)、撮影はペール・シェルベリ(Per Källberg)が担当。監督のトビアス・ファルクは1968年、アニカ・トールと同じイェーテボリ生まれで、1993年にストックホルムの国立の映画学校、Dramatiska Instisutet(60ページ)の映画監督を養成するコースを卒業した。その後、本コラム前編でも触れた『ティーンズ・ゲーム』(1997)や、テレビのマルティン・ベック・シリーズなどの助監督やセカンドユニット監督などをへて、1999年、「Star Sisters」(Stjärnsystrar)という作品で長編劇映画監督としてのデビューをはたした。その後は『海の島』のシリーズをはじめ、テレビ作品を中心に活躍している。撮影のペール・シェルベリは1947年生まれで、ボー・ヴィーデルベルイ(231ページ)監督作品、シェル-オーケ・アンデルション(232ページ)監督作品をはじめ、多くの作品を手がけている。

キャストと受賞
 キャストの方は、オーストリアのウィーンから島に逃れてきた姉妹の姉であるステフィ役にミライネ・ヘドレウル(Mylaine Hedreul)。妹のネッリ役は幼い頃をシモーナ・ヴェッチオ(Simona Vecchio)が演じ、成長してからをアムラ・セナノヴィッチ(Amra Cenanovic)が演じる。ミライネは子役として、本作以前にもいくつかの作品に出演しているが、ネッリ役の2人は、この作品がテレビ初出演となった。ほかに、ステフィの養母のメルタ役としてテレビ中心に活躍するベテラン女優、グニッラ・アブラハムソン(Gunilla Abrahamsson)、ネッリの養母のアルマ役には『歓びを歌にのせて』(本コラム第4回)にも出演しているインゲラ・オルソン(Ingela Olsson)、ステフィの養父のエヴェルト役に『太陽の誘い』(142ページ)などでも演じるヨナス・ファルク(Jonas Falk)らが出演している。
 このシリーズは各国の映画祭やテレビ祭にも参加、カナダの代表的なテレビ祭であるバンフ国際テレビ祭では2004年の児童番組部門でグランプリに選ばれ、同じ年のシカゴ児童映画祭では、テレビドラマ部門で成人審査員賞の準グランプリに選ばれた。

 こちらのドラマの方も原作と同様、スウェーデン第二の都市イェーテボリと、その郊外にある寂れた漁村を舞台に、現地ロケも交え、彼女たちが島へやって来た1939年から、第二次世界大戦が終結する1945年までを描いている。ちなみに小社刊行の『海の島』は、1939年からの1年間の物語。以下のお話の方は請うご期待、というところである。ドラマの方は、なかなか日本で公開される機会がないのが残念だが、『海の島』の「あとがき」でシリーズ全体についても紹介されているので、お読みいただければ、と思う。
姉のステフィ役、ミライネ・ヘドレウル(左)と
妹のネッリ役、シモーナ・ヴェッチオ(右)
バンフ国際テレビ祭公式サイト(英語):http://www.bwtvf.com/
シカゴ児童映画祭公式サイトの作品紹介ページ(英語):http://www.cicff.org/2004/award-win/islandSea.htm

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