「キンダー・フィルム・フェスティバル」の開催

[2006/8/6]

 今年で14回目を迎える「こどもたちのキンダー・フィルム・フェスティバル」が東京・青山の青山円形劇場を中心に開催される。

 上映はドラマ部門とアニメ部門に分かれたコンペティションで行われ、それぞれキンダー審査員によるグランプリも選ばれるが、今年はアニメ部門でスウェーデンとデンマークの作品が上映されるほか、特別上映作品としてノルウェーの作品が上映される。今回は、この映画祭で上映されるもののうち、北欧の作品を中心に紹介したい。

 なお、上映は対象が子どもということもあって、吹き替えによるものが多い。作品によっては声優が映像にあわせてその場でせりふを吹き替える「ボイスオーバー上映」という方式をとるものもある。詳細は公式サイトを参照。

『ハリエットの気球大冒険』
 スウェーデンの作品はアンナ・ベングツソン(Anna Bengtsson)監督の『ハリエットの気球大冒険』(Bollongexpeditionen:2003)が上映される。

 彼女は1951年にリンシェーピンで生まれ、ストックホルムの美術大学を卒業した。絵本作家としても有名で、邦訳も「たっぷどこへいく」(Gummi-Lisa hittar hem:2005)が刊行されている。

 今回の上映作品も1994年に刊行された同名の絵本が原作で、映像作品としては彼女のデビュー作である。アリの発明家ハリエットが、仲間と一緒に気球に乗って冒険に出かける、というお話。下記アドレスの彼女の公式サイトはスウェーデン語だが、イラストや絵本など彼女の作品を一覧できる。

アンナ・ベングツソン公式サイト(スウェーデン語):http://members.chello.se/illustrator/

『サークリーン』
 デンマークの『サークリーン』(Cirkeline _ Ost og Kærlighed)は『白くまになりたかった子ども』(Drengen der ville gøre det umulige:2002)や『鳥たちの戦争/オリバーとオリビア』(Fuglekrigen i Kanøfleskoven:1990)などでも知られる、デンマーク・アニメーション界の巨匠、ヤニック・ハストラップ(Jannik Hastrup)監督が手がけた作品。サークリーンという名前の妖精と、彼女の友達のインゴルフとフレデリックというネズミのカップルが主役の物語である。

 このサークリーンと友だちのネズミが登場するアニメーションのシリーズは、ハストラップ監督によって1967年から71年にかけて短編が何本か製作されたのち、1998年から劇場用長編作品として復活。2004年までに3作品が公開されている。今回上映されるのは2000年に製作された長編の第2作目。下記公式サイトは2004年製作の3作目のもので、デンマーク語だが、予告編や劇中挿入歌などいろいろ充実していて面白い。

『サークリーン』公式サイト(デンマーク語):http://www.sf-film.dk/cirkeline/site_content.htm

『サークリーン』
他の作品と『マレーネとフロリアン』など
 そのほかにも北欧に関係ある作品がいくつか。共同製作という形だが、ドラマ部門でエストニア、ドイツ、フィンランドによる『ルーディ』(Ruudi:2005)や、アニメ部門でドイツ、スイス、スウェーデンによる『ラクダのチェンバリンと王様』(The Fourth King:2006)が上映される。

 また、特別上映作品に、アニタ・キリ監督の『マレーネとフロリアン』がある。この作品は『いばらの垣根』という日本初上映時のタイトルで本書(北欧映画―完全ガイド)でも紹介している(168ページ)。監督のプロフィールや作品の解説など、ぜひ本書をご覧になっていただきたい。

 この映画祭では『マレーネとフロリアン』を2002年以来毎年上映し続けているという。その理由については、映画祭事務局の方によると「この作品は戦争の悲惨さを、子どもたちの視点で描いた素晴らしい作品です。教科書で戦争はいけないものだと教えるより、感性の優れた子どもたちに、このような作品を通じて、戦争の悲惨さ、残酷さについて自分の感覚でとらえてほしくて上映し続けています」ということだった。

 この映画祭では総合芸術と言われる映画をもとに、子どもたちが自然にいろいろなことを学ぶ機会を提供する、という目的から上映だけでなく、ワークショップなども積極的に行われている。ちなみに今年は『マレーネとフロリアン』のアニタ・キリ監督を迎えてのアニメ制作体験ワークショップが開催される。「世界のアニメーション体験」というコースで、切り絵や貼り絵を手法としたアニメーション制作が体験できる、というもの。これは予約制で、彼女のコースは8月5日の予定。さらに日野会場での上映では、キリ監督の舞台挨拶もある。ほかにも、実際の上映作品でボイスオーバーで声優の体験ができる「声優体験ワークショップ」や多くのゲストの来場など、夏休みの子どもたちには楽しみなイベントが盛りだくさんに用意されている。

 映画祭のスケジュールは、8月4日から6日までが東京・日野市民会館、8日から13日までが青山円形劇場で、最終日の13日にグランプリの発表と表彰式が行われる。上映のスケジュールなど詳細については、下記公式サイトを参照。
『マレーネとフロリアン』
映画祭公式サイト:http://www.kinder.co.jp/
青山円形劇場公式サイト:http://www.aoyama.org/

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