SKIPシティ国際Dシネマ映画祭が終了

[2006/7/28]

 今年で3回目を迎える埼玉県川口市のSKIPシティで開催された「国際Dシネマ映画祭」は、23日のクロージング・セレモニーをもって無事終了した。

 本コラム第33回でも紹介したように、この映画祭にはスウェーデン作品、『太っちょ泥棒のラブライフ』も参加、会期中2回の上映後には監督とのQ&Aも行われ、熱心なファンからの質問に、シルヴェーン監督が真摯に答えていたのが印象的だった。

 このQ&Aで目立ったのが、ヒロインの警官、カーリンが「日本風」のライフスタイルにはまっている、という設定なのだが、これはどうしてですか? という質問だった。作品中では、カーリンが警察のジムで柔道や柔術の型らしきものの練習をしたり、部屋のインテリアが日本風(と言っているが、日本人にはなんとなくエスニックっぽいかな、といった感じ)であったりする。それに対しては、監督自身が空手や柔道などのたしなみがあって(実際、スウェーデンでは空手や柔術、柔道などの武道がさかん)、心と体のバランスをとるのに、日本的なスタイルがいいのではないか、と考えたからということだった。また、黒澤明監督の映画から拝借したアイディアも使われているという。

 また、主人公のスリのハリーのキャラクターについては、最初はある短編への登場人物だったのだが、その作中では時間の都合で登場場面をカットせざるを得なかったという。だが監督自身はこのキャラクターを気に入っていて、今回の長編の形で復活させたのだという。外観はさえないし、悲劇に見舞われる、同情を誘うキャラクターだが、実はすごい才能をもっているという設定。今回、それらをうまく組み合わせて、絶妙なバランスでコメディタッチに仕上げることができた、ということだ。また、劇中での見事なスリの演技については、演じるトーマス・ケーレル(Tomas Köhler)自身が実際にいくつかスリの技術を「学んで」演じたり、撮影の切り方など編集の工夫で実現したものだということだった。

 最後に次回作の予定については、医師を主人公にしたドラマだそう。保険会社の指示で、診察する患者を制限されているが、困っている患者を目の前にして、とにかくベストな医療をしてあげたいと悩む医師、という設定で、コメディではないとのこと。どのような作品になるか、楽しみである。

 今回、グランプリを受賞したのは中国のルゥ・シュエチャン(路學長)監督の『契約』(The Contract)で、惜しくも本作は受賞を逃したが、上映会場は2回ともに大盛況で、みなさん満足していたようだった。今回に限らず、国内で上映されることを祈りたい。
『太っちょ泥棒のラブライフ』上映前の舞台挨拶。
ヘンリック・シルヴェーン監督(中)と、脚本のヨナタン・シェーベリ(右)
(提供:国際Dシネマ映画祭事務局)
映画祭公式サイト(「デイリーニュース」をクリックすると結果のリリースあり):http://www.skipcity-dcf.jp/

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