フィンランドのラップランドが舞台のロシア映画『ククーシュカ』日本公開

[2006/3/6]

 フィンランドでラップランド地方というと、ラップランド県の県都で、サンタクロース村で有名なロヴァニエミとか、映画監督のカウリスマキ兄弟(228ページ)が立ち上げた映画祭(84ページ)で知られるソダンキュラなど、日本人にもおなじみになりつつある。

 だがこの地方が第二次世界大戦中、旧ソ連やドイツとの戦争に巻き込まれ、焦土と化した地ということは、あまり知られていないのではないだろうか。戦乱を逃れるため多くの人々がスウェーデンなどへ避難していて、クラウス・ヘーレ(217ページ)監督の最新作「Mother of Mine」(Äideistä parhain:2005)も、そんな一人の少年の姿を描いた作品だった。

 その戦争中のラップランドを舞台にした、ソ連兵とフィンランド兵、そして地元のサーミの未亡人の物語が公開される。この映画『ククーシュカ-ラップランドの妖精』(Kukushka:2002)はアレクサンドル・ロゴシュキン(Aleksandr Rogozhkin)監督によるロシア作品である。

 1944年9月、旧ソ連との継続戦争が終わり、ドイツとのラップランド戦争の火蓋が切って落されようとする頃のこと。濡れ衣を着せられ連行中のソ連軍大尉イワンは、見方に誤爆されて負傷するが一人生き残る。そこにサーミ人の未亡人アンニが通りかかる。アンニは自宅へ彼を連れて戻り看病する。しばらくすると、仲間の怒りをかってドイツ軍の軍服を着せられ、置き去りにされていたフィンランド人狙撃兵、ヴェイッコも彼女の家へたどり着いた。お互いの言葉が分からないまま、奇妙な共同生活が始まる…。

 この作品、ロシア人スタッフによる作品だが、サーミ語、フィンランド語、ドイツ語、ロシア語の台詞が飛び交う。キャストもほとんどロシア人だが、未亡人アンニ役にサーミ人のアンニ-クリスティーナ・ユーソ(Anni-Kristiina Juuso)、ヴェイッコ役にフィンランド人のヴィッレ・ハーパサロ(Ville Haapasalo)が出演。またイワン役はロシア人のヴィクトル・ブィチコフ(Viktor Bychkov)。

 ヒロインのアンニ-クリスティーナは1979年、ラップランドのイナリ湖南岸にあるイヴァロ生まれ。実家はトナカイの放牧を営んでいるという。女優のほか、フィンランド国営放送(YLE)でサーミ語放送のDJなども担当している。ロゴシュキン監督は、1949年、レニングラード(現サンクト・ペテルブルグ)生まれで、コメディ作品「Peculiarities of the National Hunt」(1995)「Peculiarities of National Fishing」(1998)がロシア国内で大ヒット。本作もモスクワ国際映画祭で5部門を受賞、高い評価を受けている。ロシアを代表する映画監督の一人だが、日本公開は本作が初となる。また、最新作は2006年公開予定の「Peregon」(Transit)で悲喜劇だという。こちらも第二次大戦中、アメリカから同盟国に対する物資貸与(lend-lease)のプロジェクトを背景にした作品で、米ソ間の、軍人男女の禁断の恋(?)が描かれているらしい。

 今回の作品はフィンランド作品ではないのだが、これまであまり日本で紹介されることのなかった、第二次世界大戦下のフィンランドのラップランドが舞台となっていることなど、いろいろな意味で興味深い作品だろう。
映画『ククシュカ-ラップランドの妖精』
シネカノン配給。3月25日より、東京渋谷シネ・アミューズほかにてロードショー。
公式サイト:http://www.kukushka.jp/
シネ・アミューズ:http://www.cineamuse.co.jp/index.html

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