「アイスランド映画祭」上映作品の紹介(1)

[2006/1/29]

 本コラム第10回でも紹介した「Bíó'06 アイスランド映画祭」の上映作品が主催者(アイスランド映画祭事務局)より発表された。

 2001年にアイスランド大使館開館記念として開催されて以来となる今回の映画祭だが、上映は「PART1 現在のアイスランド映画を語るに欠かせない3人の映画人に注目!」と「PART2 アイスランドの歴史、文化、政治を、ヴァイキング時代からいまのレイキャヴィーク・シーンまで描く映画群で縦横無尽に!」という2部構成で、新旧の作品、合計14本がラインナップされている。

 本コラムでは、PART1とPART2、2回に分け、本書「北欧映画――完全ガイド」で触れていない作品を中心に紹介する。

 なお、会場は渋谷のユーロスペースと神戸アートビレッジセンター。上映のスケジュールなど詳細は間もなく発表だが、上映作品も変更する場合があるとのこと。本コラムでも随時お伝えしていくが、正確な情報は公式サイトを参照してほしい。

 今回はPART1の紹介である。これは「3人の映画人に注目」というテーマで、ダグール・カウリ(228ページ)、フリゼリック・トール・フレゼリクセン(217ページ)という新旧2人の映画監督、映画編集者として国際的に活躍しているヴァルディース・オスカルドッティル(Valdíis Óskarsdóttir)の3人にスポットをあて、作品を紹介するもの。

 なお、現在のところダグール・カウリとヴァルディース・オスカルドッティルはゲストとして来日することも決まっている。作品上映後のティーチ・インが行われるそうだ。ちなみにカウリ監督は今回が初来日となる。

ダグール・カウリ監督作品
 まず、ダグール・カウリ監督作品は、2004年に日本でも公開された『氷の国のノイ』(181ページ)と、日本初公開となる『ダーク・ホース(仮)』(Voksne mennesker:'05)が上映される。

 『ダーク・ホース』は彼の長編劇映画2作目だが、アイスランドのアカデミー賞にあたるエッダ賞を受賞するなど高い評価を得た作品。2005年カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門にも出品されている。さえないグラフィック・アーティストのダニエルがフランと出会い、恋に落ちるが、その日を境に信じられないような出来事が…。オフビートなコメディタッチのラブ・ストーリー。ダニエル役にスウェーデン出身のヤコブ・セーデルグレン(Jacob Cedergren)、フラン役にティッリ・スコット・ペナセン(Tilly Scott Pedersen)のほか、『恋に落ちる確率』(184ページ)などにも出演しているニコラス・ブロー、アイスランドのお隣(?)グリーンランド出身のアナス・ホーヴェ(215ページ)らが出演。また、撮影も『恋に落ちる確率』のマヌエル・クラロが担当。なお、作品はデンマークとの合作で、台詞もデンマーク語である。

フリゼリック・トール・フレゼリクセン監督作品
 次に、フリゼリック・トール・フレゼリクセン監督作品では、まず彼が長編劇映画デビュー前に手がけたドキュメンタリー『ロック・イン・レイキャヴィーク』(Rokk í Reykjavík:1982)が日本初公開となる。1981年から翌年にかけてアイスランド国内で撮影されたライブと、彼らへのインタビューで当時のアイスランド・ロック・シーンを記録。ビョーク(219ページ)のいたバンドを含む、19のグループが登場する。

 そして『エンジェル・オブ・ザ・ユニヴァース』(Englar alheimsins:2000)は、2001年に開催されたアイスランド映画祭でも公開された作品だが、劇場公開は今回が初となる。彼の『ムービー・デイズ』(104ページ)で脚本を手がけたエイナル・マール・グズムンズソンによる、自身の兄弟をモデルにした小説を原作とする作品。精神を病んだポールを主人公に、彼とその周囲の人たちとの日々を描いた。ポール役は『陽のあたる場所から』(186ページ)にも出演しているイングヴァール・エッゲルト・シグルズソンが演じる。ほかに今回の映画祭PART2で上映予定の『101レイキャヴィーク』に監督・出演したバルタザール・コルマキュル(31ページ)、フレゼリクセン監督の短編『氷の愛撫』(129ページ)に出演したヒルマー・スニア・ガドゥナソン(Hilmir Snær Guðnason)らが演じている。

 ほかにフレゼリクセン監督作品として『精霊の島』(126ページ)がラインナップされている。
『エンジェル・オブ・ザ・ユニヴァース』
ヴァルディース・オスカルドッティルが編集を手がけた作品
 今回の最後は、ヴァルディース・オスカルドッティルの編集作品。彼の作品としては、日本初公開となる『ソドマ』(Sódóma Reykjavík:1993)と『エターナル・サンシャイン』(2004)が上映の予定。

 『ソドマ』は、オスカル・ヨウナソン(Óskar Jónasson)監督の処女長編作で、カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門にも出品された。母親のテレビのリモコンが故障、それをきっかけに展開されるドタバタを描いたコメディ。母親役にソウラ・フリズリクスドッティル(Þóra Friðriksdóttir)、母に従順な息子アクセル役にビョルン・イェルンズル・フリズビョルンソン(Björn Jörundur Friðbjörnsson)が出演。フリズビョルンソンは本作のほか今回の映画祭で上映される『イキングット』、『エンジェル・オブ・ザ・ユニヴァース』にも出演している。また、サウンドトラックにはビョーク参加の曲が2曲フィーチャーされている。

 『エターナル・サンシャイン』(Eternal Sunshine of the Spotless Mind:2004)はミシェル・ゴンドリー監督、チャーリー・カウフマン脚本による、いわずとしれたアカデミー賞(脚本賞)受賞作品だが、彼も英国アカデミー賞最優秀編集賞を受賞している。
公式サイト:http://www.bio06.jp/
ユーロスペース:http://www.eurospace.co.jp/
神戸アートビレッジセンター:http://kavc.or.jp/

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