オールフィンランド撮影の『かもめ食堂』、今春公開

[2006/1/24]

 ヘルシンキの小さな食堂が舞台の邦画、『かもめ食堂』がこの春公開される。この映画、デビュー作『バーバー吉野』(2003)でベルリン国際映画祭児童映画部門特別賞を受賞した荻上直子の監督・脚本作品。この食堂を経営する日本人女性と、そこに集う人たちの、ちょっとやるせなく、ちょっと不思議な物語で、原作は群ようこ(幻冬舎刊)である。

 主な出演者に、食堂の店主・サチエ役として小林聡美のほか、片桐はいり、もたいまさこら個性的な日本人女優を起用。もちろん、ヘルシンキが舞台なだけに『過去のない男』(170ページ)などアキ・カウリスマキ(228ページ)監督作品ではおなじみのマルック・ペルトラ(216ページ)らフィンランド人も多くキャスティング。また、撮影は『ヘイフラワーとキルトシュー』(本コラム第2回参照)を手がけたトゥオモ・ヴィルタネン(Tuomo Virtanen)が担当。日本人とフィンランド人のキャスト、スタッフの手によってつくられた、邦画史上初のオールフィンランド撮影作品となった。

 撮影に使われた「食堂」は、実際にフィンランド人が経営する、ヘルシンキ市内のカフェを使って撮影。実は昨秋、筆者は現地在住の方にそこへ連れて行っていただいたのだが、フィンランドの「おふくろの味」が楽しめる、実に気さくないい「食堂」だった。映画と同様、近所に住んでいたり、働いている人たちが食事をしに来る安くておいしいお店で、行ったときにはまだ撮影の際の「かもめ食堂」のロゴなども残してあった。映画が公開されたら、ちょっとした観光スポットになるかもしれない。

 その他、かもめ食堂のインテリアがアルテックだったり、フィンランドを代表する建築家、アルヴァ・アールトが設計したアカデミア書店が出てきたりと、近年流行の「北欧モダン・リビング」も作品中にさりげなく登場するようなので、北欧デザイン好きな人も楽しめるだろう。

 配給はメディア・スーツ。3月11日(土)より東京・シネスイッチ銀座ほか全国で公開。
公式サイト:http://www.kamome-movie.com/
メディア・スーツ:http://www.mediasuits.co.jp/
シネスイッチ銀座:http://www.cineswitch.com/

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