What's New 8月7日[コメント]

番組の舞台となった集落の前を「川津高野線」(県道733号線)が通っており、このあたりも10年前の2011年(平成23)8月25日の台風第12号による「紀伊半島大水害」で大きな被害を受けたようで、いまも河川・堤防や道路の復旧工事が続いている。この神納川は十津川に合流しさらに熊野川となって、新宮で太平洋にそそいでいる。十津川には風屋(かぜや)ダムと二津野(ふたつの)ダムがある。番組に出ている西さんの実家は風屋ダム(1960年に発電開始)によって水没した集落に違いない。
いまから132年前の明治22年(1887)8月19日に起きた大水害で、十津川郷6ヶ村では全体の4分の1を占める1610戸が全壊・流失、死者は168人という大被害を受けた。特に神納川のあった北十津川村では203戸のうち137戸が全壊・流失、死者は86人にのぼった。家や田畑を失った641世帯、2600余名の十津川郷の村人は、同年10月末から11月はじめ、3回にわかれ、高野山から橋本に出てそこから汽車の乗り、神戸港から船で20日間をかけ、北海道の小樽に向かった。そして空知郡の山林を開拓して、「新十津川村」(今の新十津川町)を建設した。しかし、翌年の7月までに移民した98名が死亡したというから、ほんとうに過酷な北海道開拓生活だったに違いない。十津川の生活風俗、大水害、北海道移民、新十津川の開拓生活を余すことなく記録したのが、『懐旧録 十津川移民』(森秀太郎著/森巌編、新宿書房、1984年)だ。著者の森秀太郎は神納川地区(内野)109戸の総代として北海道移民をリードしたひとりだ。
この本は宇江敏勝さんの『山に棲むなり』(1983)を出した時、宇江さんからこれは第一級の民俗資料だと強く勧められ、編者の森巌さんを紹介されて、出版したといういきさつがある。