『山人伝』
宇江敏勝 著

 
 
 
 

連日猛暑が続いている。
こんなときには、背筋がぞくぞく寒くなるような、怪談を読むことをお薦めする。
本書は、「宇江敏勝の本」全12巻でノンフィクションを描き終えた著者が
、 満を持して書きはじめた「民俗伝奇小説」集の第1弾(2011年6月)。 山を知り尽くし、山で暮らす人と動植物を、愛情深く見つめてきた者だけが描ける作品群である。

三津田信三 編『怪異十三』(2018年7月、原書房)は《入手困難な逸品から王道の古典的作品まで》《ほんとうにぞっとした話》国内外13話のアンソロジーである。
国内編7話の一つに、この『山人伝』の中の「蟇(ひき)」が登場する。全作品の中で3ページと、もっとも短い小説だが、編者は解説で《宇江作品の中で、一番短いにも拘らず圧倒的に怖かったのが、本作になる。岡本綺堂の怪談に通じる戦慄に、一読して僕は震え上がった。やっぱり「本物」ほど恐ろしいものはないのである。》と結んでいる。